第23話[弱いから恐ろしい]
日菜達を襲う魔王の娘の首を刎ね、勇者はそのまま影に向かって剣を振るう。
影と勇者の剣が迫り合い、互いが顔を睨み合う中、回復したスタリエが勇者に向かって叫んだ。
「くっ、待ってなさい勇者、緑を治したら直ぐにあんたに魔法をかけてあげるわ」
だが、勇者は必要無いと言って断った。
「コイツだけは私の力だけで倒す」
そう言うと勇者は迫り合いに勝ち、そのまま影の体に剣を突き刺していく。
「甘いわね、心臓はそこじゃ無いわよ」
「それとも覚悟が出来ていないのかしら?」
そう言うと影は勇者を片手で抱きしめると、もう片方の手で剣を振り落とした。
「一緒に死にましょう」
「ダメェー」
日菜の叫びと同時に魔法が発動され、影の手が爆発して吹き飛ぶ事に……。
弧を描き床に転がる手、握られていた剣はカランと音をたて、勇者は影から剣を抜き、そして心臓を一突きした。
「そう、それで良いのよ」
「それで……」
血を吐きながら、勇者に笑顔を向ける影。
よろめきながらも、影は勇者から離れると言った。
ずっとこの時を待っていたのだと……。
「何を言って……」
「きっと証明したかったのね」
「どんな悪も正義には勝てない事を……」
だから理由を付けて勇者達を見逃して来たのね。
「ごめんねムー、私の我儘に付き合わせちゃって……、でも大丈夫、今、あなたの所へ行くから、一人にはさせないから……」
影は残った左手で勇者の剣を抜き取ると自らの首にそれを当てた。
「気を付けてね、人間は弱いから恐ろしい……」
そう言い残すと影は自らの首を斬り、自害するのだった。
第23話 完




