表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/367

第9話[死]

お風呂で汚れを落として来た勇者は、私に抱きつきながら緑ちゃんに自己紹介をしていた。

そして私は緑ちゃんに何故死んだのかを尋ねる。

すると緑ちゃんは目を瞑り、過去を振り返りながら私達に何故死んだのかを語った。


赤青緑。

学校での成績は常に一番で、運動神経抜群。

よく部活動の助っ人に呼ばれ、人望も厚い。

そんな彼女の父は赤青流の当主であり、よく一人で道場に行っては、剣の稽古をしていた。


「へぇ〜、緑ちゃんのお家、道場をやってるんだ」


私がそう言うと緑ちゃんは首を横に振り答える。


「いえ、プライベートです」

「父は良く、異次元から怪物が来た時に備え、鍛えていたのです」


「……」


そんな父を尊敬し、緑も幼い頃から父と一緒に体を鍛えていた。


「いいか緑、みんなが馬鹿にしてきても、気にする事は無い」

「もしかしたら、明日、オーク共が異次元から現れるかも知れない」

「そうなった時に困らない為にも、体を鍛えておかねばな」


それが父様の口癖だった。


「緑、お父さんの様になっては駄目よ」

「アレは、顔だけ何だから」

「世の中大事なのは勉強よ」

「勉強第一よ」


これが母様の口癖だった。

そんな両親のおかげか、私は文武両道の完璧な人間に育ってしまう。


(あっ、自分で言っちゃうんだ)


そんな私がいつもの様に放課後、友人と帰っていた時だった。

私の目の前で、子供が道路に飛び出してしまう。

すかさず私は子供を助ける為に道路へ飛び込んだ。

私に迫るトラック……。



「そうか、それで……」


私は下を向きながら呟いた。

子供を助ける為に……。

緑ちゃんの優しさに、私は涙を滲ませる。


「いえ、それが原因じゃ無いですよ」


「えっ?」


私は顔を上げ、緑ちゃんの話しの続きを聞く事にする。


私は子供を抱き抱え、持ち前の運動能力でトラックから子供を助ける事に成功しました。

その場に居た皆んなが私に称賛の拍手を送ってくれます。


「いやぁ、子供を轢かなくて助かったよ」


「お姉ちゃん、ありがとう」


トラックの運転手、助けた子供からもお礼を言われ、私は大満足し、一緒に帰っていた友人の元へ走って向かいました。


「流石緑ちゃんだね」

「あっ、緑ちゃん足、怪我してる」


子供を助けた際、擦り剥いたのでしょうか私の膝から血が滲んでいました。

友人に連れられ、公園のベンチへ座り「ちょっと、待ってて」と言われ、友人は鞄を私の隣に置き、ハンカチを濡らしに何処かへ行ってしまいました。


「フフフ、大袈裟なんだから……、んっ?」


友人の鞄から漫画の様な物が少しはみ出している。

一体どんな漫画を読んでいるのか気になり、私は悪いと思いながらも鞄に手をかけた。


「こ……、これは……」


イケメン男子と眼鏡をかけたイケメン男子が抱き合っている表紙。


「な、なんて物を学校に……」


手が震え、好奇心からかページをめくる手が止まらない。

ついでに私の鼻血も止まりませんでした。

やがて、友人がハンカチを濡らし戻ってくる頃には、私は倒れ、死んでいました。


「つまり、出血死ですね」


緑ちゃんの話しを聞いて私は思いっきり溜め息を吐き出すのだった。


第9話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ