第18話[魔界再び]
光の国に着いた勇者達は、ドラゴンのお姫様の背中に乗って、再び魔界へ向かおうとする。
そんな中、ゼブロスがお姫様に頭を下げた。
「姫がご無事で何よりです」
「えっと……、どちら様?」
「覚えてないのも無理ありません」
「会ったのは……」
感動の再会なのは良く分かるが、日菜達は長くなりそうな気がした為、話しに横槍を入れ、早く魔界へ連れて行ってくれる様にドラゴンのお姫様に頼み込んだ。
そして辿り着いた魔界で勇者がポケットから何かを取り出した。
「何それ?」
そう尋ねるスタリエに勇者がサーベリックから渡された道具だと答え、魔界に着いたら赤いボタンを押せと指示を受けていた事を話す。
「ふむ、やっとか」
「凄いサーベリックちゃんの声が聞こえる」
驚く日菜を他所にサーベリックはそのまま魔王城に進めと指示を出した。
言われた通り、魔王城へ歩みを進める日菜達。
その道中、魔王城から魔物の兵が現れ日菜達は戦闘態勢を取る事に。
「何かあったのか?」
「うん、ちょっと魔物達が……」
「ふむ、ならば青のボタンを押すとよい」
「えっ?」
ボタンを押すと魔物達の兵が一瞬で消えたりするのかな?
そう思い、勇者が青のボタンを押すと、魔界に武装した大勢の人間達が現れた。
「ふむ、此処が魔界か」
「サーベリックちゃん⁉︎」
「どうして此処に?」
「ミカナタ達が日菜達の力になりたいと言うのでな、この転送装置を作ったのじゃ」
勇者に持たせた道具で位置を特定し、青のボタンを押す事でミカナタ達が各国に配って回った転送装置が起動され、魔界へ瞬間移動出来るようになる。
そう説明するサーベリックを突き飛ばし、レイナは緑に抱きついて行く。
「私らも戦うぜ、その為に強力な武器を沢山作って来た」
そう言って笑うレイナ。
その後ろでアーネが騎士達に語りかけ、奮い立たせていた。
「スタリエ様、我が国も戦いますわ」
水の国のお姫様がそう話す中、メルヘン王国のお姫様も現れ、緑に言う。
「剣士様、我が国も微力ながらお手伝いします」
「お姫様」
メルヘン王国のお姫様に笑顔を向ける緑を見て、嫉妬したレイナが緑を抱き寄せる。
「こっち行こうぜ緑」
「まあ、お待ち下さい剣士様」
両手に花。
そんな状態の緑を見て、羨ましさからか、勇者の心が荒んでいく。
「魔法使い様、私も来ちゃいました」
始まりの国のお姫様が日菜にそう言うと、お姫様の背後からベルトベア王国の国王が現れ、そして火の国や氷の国の王や女王も現れた。
これまで日菜達が立ち寄った街や国の人達が、この魔界へとやって来たのだ。
当然、リーサやミカナタ、そしてフウカ達も日菜達の為にこの魔界へとやって来る。
「ちょっとフウカは大丈夫なの?」
心配する勇者に、フウカが答える。
「魔王様の娘に見つからなかったら大丈夫です」
「それに、逆らえなくなったら、カエンとスイが私を縛ってくれますから」
フウカがそう言うとカエン達は勇者に縄を見せた。
「雑魚達は私に任せ、日菜さん達は影の所へ向かってくれ」
そう言って親指を立てるミカナタに日菜達は笑顔で頷く。
「さーて、皆の者、戦じゃー」
ナナンナの叫びに雄叫びを上げる各国の兵士達。
何千何万という魔物の兵に大勢の人間が突っ込んで行った。
「凄い、凄いよ」
そう言って興奮する勇者。
何より自分達の為にこれだけの人が集まってくれた事に喜びを感じていた。
「私達も皆んなに負けていられないね」
そう言って日菜は勇者の背中を叩く。
「うん、よーし、待ってろよ影」
「ララちゃんを救い、あんたを必ず倒して見せるから」
そう言って勇者を先頭に日菜達は魔王城に向かって走るのだった。
第18話 完




