第16話[仲直り]
それぞれが寝食を別にし、幻影と戦う事数日。
未だに緑の幻影に一撃を入れる事が出来ないでいた。
「ふむ、このままでは一生試練をクリアする事は出来ないだろう」
しかしどうする?
試練のランクを落とす訳にもいくまい。
かと言って、仲直りさせる事も出来ないし……。
ゼブロスは悩みながらも、四人を見届ける事にした。
(何、女神様に選ばれた四人だ)
(きっと大丈夫だろう)
そう思い、ゼブロスは昼寝を始める。
一方、勇者は一人考えていた。
どうすれば皆んなと仲直りが出来るかを。
「皆んなの事が気になって、戦いに集中出来ないや」
「それに一人で食べるご飯は美味しくないよ」
それは日菜達も同じだった。
だが、意地になってしまい。
お互いに謝る事が出来ないでいた。
「やっぱり、私が謝らなくちゃ」
そう言って勇者が立ち上がる。
これまで苦楽を共にして来たんだ。
この四人の絆はどんな海の底よりも深い。
そんな事を考えながら、勇者は日菜達に会いに向かう。
そして日菜を見つけ、一言謝罪をして頭を下げた。
「勇者……、私の方こそごめんね」
「日菜ちゃん……、仕方ないな」
「許してあげるよ」
「は?」
込み上げて来た涙が止まる日菜。
そんな日菜に勇者は言う。
「その代わり、今穿いてるパンツを頂戴」
「この馬鹿」
日菜のビンタを喰らい勇者は笑う。
いつまでも、しんみり何てしていられない。
この、おチャラけたキャラこそが私なんだ。
「本当に馬鹿なんだから……、でも、ありがとう」
日菜と仲直りをした勇者は次に緑と出会う。
そして日菜の時と同様に緑にも謝罪した。
「勇者殿……、私の方こそすみませんでした」
「そんな、緑ちゃんは悪くないよ」
「悪いのは全部私何だから」
そう勇者は言うが……。
「いえ、勇者殿の言う通りでした」
「例え邪魔だったとしても、歳上の方に退いて下さいなどと……」
「えっ?」
「次からは邪魔でも退けだなんて言いません」
「我慢します」
「いや……、えっ?」
戸惑う勇者の背後で笑いを堪える日菜、そして三人はスタリエを捜す事に。
そして……。
「スタリエちゃん、ごめん」
頭を下げる勇者を見て、スタリエも素直に謝る事に。
ここ数日間、ずっと一人で寂しかった。
仲直り出来る機会があれば、仲直りしたかった。
だからこそ、スタリエは涙を浮かべながら、三人に素直に謝る事が出来た。
「ねえ、仲直りしたんだから皆んなで一緒にご飯を食べようよ」
「私、久しぶりにスタリエちゃんの料理が食べたいな」
「日菜……、ええ分かったわ」
「美味しい料理を食べさせてあげる」
勇者と緑は肉を、日菜は山菜と果物を採りに向かう。
そしてスタリエは三人が持って来た食材を調理する事に。
そして出来た料理を四人は囲む。
「明日からまた四人で頑張ろうね」
料理を食べながら三人に話しかける勇者。
日菜達は頷き、打倒緑の幻影を掲げ笑い合うのだった。
第16話 完




