第15話[大喧嘩]
試練を開始して一週間、日菜達は険悪なムードになっていた。
というのも、勇者とスタリエが緑の幻影に攻撃を仕掛けるが、それを交わされお互いの攻撃を喰らってしまったのが原因である。
「痛っ、ちょっとスタリエちゃん、何するのさ」
「あんたこそ、何するのよ」
「あんたの剣の所為で肌が斬れちゃったじゃない」
傷口を治療しながら怒鳴るスタリエに、勇者は剣を投げ捨て怒鳴り返す。
「何が肌だよ、こっちは顔面なんだよ」
「可愛い顔に傷が残ったらどうするのさ」
「へっ、何が可愛い顔よ」
「第一、あんたの顔が傷だらけになれば、あんたにナンパされて迷惑する女の子が減って良い事じゃない」
「何その言い方、ムカつくんだけど?」
「私は日頃からあんたにムカついているわよ」
「チッ、これだからお嬢様は……、もういいから顔の傷治して」
「自分で治せば良いじゃない」
「傷薬か回復薬があるでしょ」
「それでちゃんと傷口が治るの?」
「痕が残ったりしない?」
「知らないわよ、でもまあ、天才の私なら痕も残らず治す事が出来るからね、分かったわ」
「ちゃんとお願い出来たら、治してあげる」
「ケッ、何を偉そうに、それしか取り柄が無い癖して」
この勇者の一言でスタリエは激怒した。
「は?」
「今何て言ったの?」
「回復しか取り柄が無いって言ったんだよ」
「聞こえなかった?」
「取り消しなさい」
「じゃないと回復魔法をかけてあげないわよ」
「じゃあ無能だね」
「回復魔法を使わないスタリエちゃん何て無能確定だよ」
涙を浮かべるスタリエ。
正直、喧嘩を止める気力も無い日菜だったが、流石に不味いと思い、二人の間に割って入る事に、だが……。
「何よ、日菜だって何の役にも立ってないじゃない」
「えっ?」
「そうだよ、寧ろ日菜ちゃんの炎の魔法が邪魔している所為で勝てない所あるからね」
「ちょっと二人共……」
「偉そうな事を言うなら、もっと役に立ってから言いなさいよ」
「そうだよ、無闇矢鱈と当たらない魔法を放って、こっちはいい迷惑だよ」
「何それ……、ふ〜ん、そんな事言うんだ」
日菜までもが怒り出し緑が慌てて止めに入る。
「つか緑ちゃんも、酷いよね」
「何がです?」
「私が緑ちゃんの幻影に斬りかかった時、退けって言わなかった?」
勇者に責められ、俯く緑。
そんな緑にスタリエが追い討ちをかける。
「緑ってそういう所あるわよね」
「何処か私達を見下してるっていうか……」
「なっ、そんな事は……」
「緑ちゃん、気にしなくていいよ」
「日菜殿……」
「ていうか私達は個人で試練に挑むべきだと思うな」
「四人でやっても上手くいかないだろうしさ」
日菜の提案に乗る勇者とスタリエ。
こうして四人は個別に緑の幻影と戦う事になったのだった。
第15話 完




