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第14話[女神の果実]

何故だろう?

私は今、ドラゴンに怒られている。

紹介状を見せた途端、いきなり怒って来たのだ。

これも何かの試練なのだろうか?

きっとそうに違いない。

だって、砂利道で正座させられて足が凄く痛いんだもの。

意味も無く、そんな事させないよ。


「ふう、愚痴を吐いたらスッキリしたわ」


へっ、愚痴?


「それじゃあ、試練について説明するわね」


いや、ちょっと待ってよ。

愚痴ってなんなの?

いきなり「またか、ボケェー」って叫んで来たと思えば「取り敢えず座りなさい」と言われ「何が紹介状よ」と文句を言い続けられたアレが愚痴なの?

私がそう話すとゼブロスさんは溜め息を吐いた。


「あのね、私が精霊に意地悪されている事は知ってる?」


「いや、知らないです」


再び深い溜め息を吐くゼブロスさん。

えっ、何?

私達は二人の仲の悪さが原因で砂利道で正座をさせられたの?


「まあ、いいわ」

「取り敢えず、魔王を倒す為の試練を行いましょう」


「いや、あの……、魔王は倒しました」


「へっ?」


「っていうか、上空に影がモニターで幹部達の処刑を行っていたと思うのですが……」


「影?」

「モニター?」

「何の話し?」

「それより、あなた達は何しに此処に来たの?」


「えっと……」


「ああ、いい、言わないで、あなた達の記憶を見せて貰うわ」


そう言うとゼブロスは日菜達の頭の中を覗く。

そして全てを理解したゼブロスは当初考えていた試練とは別の試練を日菜達に与える事にした。


「あなた達には緑の幻影と戦って貰います」


「へっ、緑ちゃんのですか?」


「ええ、彼女に一撃でも入れられたら、あなた達に女神の果実を与えましょう」


そう言って作り出された緑の幻影。

四人は意気込み、緑の幻影に向かって行くが、誰も彼女のスピードに追いつける者は居なかった。


「ちょっとこれって……」


「うん、どうやら魔王と戦う前の緑ちゃんみたいだね」


「流石、全盛期の私です」


スタリエ、日菜、緑の三人がそう話す中、勇者は緑の幻影を追い、攻撃を仕掛ける。


「くっ、交わされた」


息を切らす勇者。

そんな中、スタリエがゼブロスに文句を言う。


「あんた、緑は世界最強のステータスを持っているのよ」

「勝てる訳ないじゃない」


「ならば帰りなさい」

「あの幻影はあの頃の緑を忠実に再現しています」

「つまり、あの幻影からの攻撃にはダメージがありません」

「それに加え、こっちは四人がかりで、一撃を当てるだけで良い」

「それが出来ないのなら、この実を食べる資格がございません」

「お引き取りを」


そう言われ、スタリエは渋々試練を続ける事に。

そして、数時間後。

誰一人、緑の幻影に攻撃を当てる事無く、体力切れでダウンした。


「ふむ、今日は終わりにしましょう」

「近くの泉で汗を流すと良いでしょう」

「食事は各自、動物を狩るなりして済ませて置いて下さい」


そう言って起き上がるゼブロスに食事は要らないのか日菜が尋ねる。


「私は大丈夫です」

「歳の所為か暗くなってくると眠くなってしまうので、寝床へ向かう事にします」


そう言って羽を羽ばたかせるとゼブロスは、ゆっくりと飛び、自らの寝床へと飛んで行った。

そして寝床に着いたゼブロスは瞳に涙を浮かべ思う。


「まさかドラゴン達の城が壊滅しているとは……」


日菜達の記憶を見て、故郷の惨状を見たゼブロスは心を痛めながら、夕日に向かって雄叫びを上げる。

まるで仲間達に別れを告げるかの様にゼブロスは涙を輝かせながら、何度も何度も繰り返し、雄叫びを上げるのだった。


第14話 完

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