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第5話[欲望の森]

緑は今、物凄く奇妙な体験をしていた。

欲望の森に足を踏み入れて数分。

急に日菜が飛びつく様に落ち葉を掻き集め出したのだ。


「金じゃー、これは全部、私の金じゃー」


急に日菜が可笑しくなり、緑は勇者とスタリエに助けを求め様と振り返るが、二人は大木相手に欲情し始めていた。


「日菜ったら、いきなり服を脱いで大胆なんだから……」


「いいよ、日菜ちゃんになら私の全てをあげちゃう」


(そんな……、勇者殿やスタリエ殿まで……、まあ、あの二人が可笑しいのは、いつもの事か……)


そう思い、緑は座禅を組む。

目を閉じて、心を落ち着かせる緑に日菜達の声が聞こえてくるが……。


「ヒヒヒ、金じゃあ」


「あん、いいわよ日菜」


「ハァハァ、最っ高に興奮するよ」


緑の集中力は凄まじく、そして遂に森と一体化する事に成功する。

鳥の囀り、虫の這う音、木々が風に靡く音。

様々な音を聞きながら、緑はある話し声に聞き耳を立てるのだった。


「シシシ、残りは一人よ」


「さあ、コイツはどんな欲望を抱いているのかしら……、ブホッ」


「ちょっとどうしたの?」

「鼻血なんて出して……」


「いや、何でも無いわ」

「兎に角、この子はピュアで何の欲も無いわ」


「はあ?」

「そんな人間、赤ん坊以外居ないでしょ」


そう言って妖精が緑の心を覗き込む。

すると制服を着たイケメン高校生が禿げた校長に言い寄っている映像が妖精の目に写り込んで来た。


「止めないか君、私は校長なんだ、生徒である君とそんな……」


「俺、校長先生が側に居てくれないと不安で仕方ないんです」

「校長先生は俺の事……、嫌いですか?」


「エクスタシー」


鼻血を撒き散らしてそう叫ぶ妖精。

確かに欲望はあった。

だが、男同士が抱き合って居る何て破廉恥な事、口が裂けても言えない。


「確かに、彼女は無欲の様ね」


あんな破廉恥な欲望、幻術として使いたく無い。

そう思った妖精達は緑を無欲認定する。


「先程から何を話しているのですか?」


座禅を止め、妖精達の前に現れる緑を見て、飛び立とうとする妖精を緑は捕まえる。


「もしかして、お二人が日菜殿達を可笑しくしたんですか?」


「やっ、離してよ」


「そうよ離しなさいよ」


「答えて下さい」


二人を持つ手に少し力を入れる緑。

それに観念したのか、妖精達は全てを話す事に……。


「成る程、人を食べる為に幻術をかけて、欲望を曝け出し、自我を失った所を生きたまま食べると、そういう事ですか?」


「ええ、そうよ」


「そこら辺を見てみなさい、私達に食われた人間達の骨だらけでしょ」


「この森にはお宝があると聞いてやって来る人間が多くて、簡単に幻術にかかってくれたわ」

「お陰で食べるのには困らないわよ」


「そうですか、よしっ、殺しましょう」


「えっ?」


唐突に緑に死刑宣告をされる妖精達。

二体の妖精の顔は青くなり、必死になって緑を説得しようとする。


「ちょっと待って、仲間達は良いの?」


「はい、大丈夫です」

「お二人を殺せば、日菜殿達は元に戻るでしょう?」


(うっ、そうだけど……)


「私達を殺しても、他の妖精達が再び襲って来るわよ」


「ならば、死体を身につけて襲って来ない様にします」


そう言うと緑はカラスの話しをする。

カラスは頭が良い生き物で、畑に本物のカラスの死体を置く事で、此処は危険な場所だと認識し、畑に近寄らなくなる。

その事を妖精達に話すと、二体の妖精達は恐怖からか体の震えが止まらなくなっていた。


「落ち着いて、あなた名前は?」


「緑です」


「そう緑、地面を見てご覧なさい」

「あなたの好きな男同士がエッチな事をしている本が落ちているわよ」


「そうですか」


「えっ、それだけ?」

「もっとこう、何か無い訳?」


恥を承知でかけた幻術も、緑には効果が薄かった。

そんな緑を見て、慌てる妖精達。

そんな妖精達に緑は言う。

本なら後で読めば良いと……。


「馬鹿な、普通はあそこの女みたいになるのに、どうして?」


日菜を指さす妖精。

「金じゃあ」と低い声で叫びながら落ち葉を集める日菜を見つめ、緑は答えた。


「私は父様に対幻術対策方を習っているので、大丈夫です」


そう言うと緑は過去を振り返るのだった。



第5話 完

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