第2話[漁師]
勇者は一人、丘の上で海を見つめていた。
あれから化け物イカを探して数日が経つ、なのに見つかるのは只のイカばかり……。
次第に勇者の心は壊れ、一人鼻水を垂らしながら、海に纏わるオリジナルソングを口ずさむ。
「あっ、いたいた」
「大変なら私達も手伝おうか?」
「ケッ、何を今更、いいよね日菜ちゃん達は海で泳いで、バカンス気分を味わえて」
「えっ?」
「対して私は漁師になった気分だよ」
今朝、手伝おうかって聞いた時「いいよ、いいよ、大丈夫だから日菜ちゃん達は海を満喫してて」って言ってたの、何処の誰だったっけ?
などと思いながらも、日菜は優しく声を掛けるのだが……。
「日菜ちゃんに見つける事が出来るの〜?」
挑発的に話す勇者の顔を見て、何だか段々と腹が立ってきた。
「そのプルプルの二の腕に細い足、そして男を……、私を惑わすそのクビレ、そんな体で何が出来るのよ」
「漁師、舐めてる?」
いや、勇者も漁師じゃ無いでしょ。
そうツッコミながらも私の怒りは頂点に来ていた。
「ハァハァ、何だか日菜ちゃんの水着姿を見ていたら、ムラムラしてきたぜ」
「ちょっと茂みに行こうか?」
息を荒げる勇者の頭を私は力一杯、杖で殴打した。
「どう?」
「興奮は収まった?」
「うん、バッチリだよ」
「それよりごめんね、日菜ちゃんに嫌な思いをさせちゃって……」
「もういいよ、それに可笑しくなっちゃう位、大変だったんだよね?」
「私の方こそ、甘えてばかりでごめんね」
こうして勇者と仲直りした所で日菜は勇者に化け物イカについて、王様に訪ねに行こうと提案する。
自国の海の事情何だから、きっと把握している筈だろう。
そう思い、スタリエを連れて訪ねに行くのだが、予想外の返答が返って来て、日菜達は絶句するのだった。
「そりゃ、絶滅危惧種なので、そう簡単には見つからないでしょう」
「……」
第2話 完




