第83話[休息]
ベルトベア王国で各々が好きな事をして過ごしていた。
「スタリエ殿、また七が揃いました」
「そう、それは良かったわね」
カジノでコインを大量に獲得する緑に対してスタリエは一つの台に大量のコインを投入し、お金を注ぎ込んでいた。
一方、日菜はというとリーサと一緒にベルトベア王国を観光する事に。
「そういやこの国、ちゃんと観光してなかったかも」
そう言って、はしゃぐ日菜を見て顔を赤くするリーサ。
ああ、日菜さんに添い寝して貰いたい。
そう強く思っていた所為か、リーサはその事を口に出してしまう。
「えっ?」
「今何て言ったの?」
思わず聞き返す日菜。
「あっ、いやその……、違うんです」
「いや、違わないけど、その……、私お姉ちゃんだから、その……、誰かに甘える事が出来なくて、つい……」
そうか、そうだよね。
リーサちゃんは弟や妹の面倒を見て来たんだもんね。
そりゃ甘えたい時もあるよ。
よし、此処は私が……。
「いいよ、添い寝してあげる」
「って言っても、これまでの旅で一緒の部屋に泊まっていたけどね」
「日菜さん……」
両手で口を押さえ喜ぶリーサ。
そんなリーサを影から見守るロイ。
「上手くやってんじゃん」
そう呟きながら、ナナンナの方を振り返る。
名誉を失い項垂れるナナンナを見て、思わず溜息が出る。
こっちも何とかしなきゃと考えるロイだが……。
「あっ、ママ見て、変態ジジルガが居るよ」
「コラッ、ジジルガさんでしょ」
「オホホホ、すみません家の子が〜」
「はぁ〜」
凄い落ち込み様のナナンナを見て、どうしたら良いのか戸惑っていた。
そんな中、魔物達の団に出くわし、一緒に食事をする事に……。
「何、辛い時は酒が一番」
そう言ってお店に入り、酒を注文するミカナタ。
届いた酒をナナンナの前に置くと店員がやって来て、ミカナタを注意した。
「ちょっと子供に酒を飲ませては困りますよ」
直様、別の店員が現れ注意した店員を殴る。
「お前は新聞を読んで無いのか?」
「この方はジジルガ様だ」
「えっ、あの変態で有名の?」
「はぁぁ〜」
深い溜め息を吐くナナンナを見て、ミカナタ達は思った。
こんな不味い酒は初めてだと……。
それぞれが好きな時間を楽しんでいる中、勇者は一人、草原を見渡せる緩やかな丘の上に座っていた。
「そろそろ材料集めの旅をしないとだね」
これから過酷な旅が始まるだろう。
だからこそ、皆んなには今日を楽しんで貰いたい。
「でも、私に影を倒せるのだろうか?」
日菜ちゃんは言った。
皆んなで協力して倒すんだと……。
私の名前を呼んで、言ってくれた。
それでもやっぱり、不安だよ。
「今の私達じゃ、影には勝てない」
それでも諦めてはいない。
必ず奴を倒して、ララちゃんを救ってみせる。
そんな事を思っていると、茂みからリトルウルフが現れた。
そういえば、初めはこの子にも勝てなかったんだよね。
それが今では魔王軍幹部より強くなっている。
「グルル」
「ありがとね、何だか元気が出てきたよ」
「でも、君じゃ私には勝て無いから逃げた方が良いよ」
そう言ってリトルウルフを追っ払うと勇者は立ち上がり、背伸びをした。
そして太陽の光を浴びながら、勇者は叫ぶ。
「待っててね、ララちゃん、私達が絶対に救ってあげるから」
そして勇者は深呼吸をして、ベルトベア王国へ走って帰って行くのだった。
第83話 完
第8部 完




