第81話[死刑にします]
「仕方ないなぁ、日菜ちゃん此処は私に任せてよ」
勇者は日菜の肩に手を置き、自信あり気にそう言うとカッコをつけ始めた。
そして……。
「私に免じて許してくれないかな?」
「あなたも次いでに死刑にします」
「フッ、駄目だった」
いや、駄目に決まっているでしょう。
勇者は国からの援助を全てキャバクラに使ったり、神父を脅した罪があるんだよ。
普通に勇者に免じても、フウカを許してくれないよ。
つか、お姫様も何気に勇者を死刑にしようとしているし……。
「ちょっとお姫様、此処は日菜さんに良い所を見せるチャンスでは?」
「そうね、私が次期王に相応しいと思わせなくちゃね」
「張り切って二人の処刑をするわよ」
頑張る所はそこじゃ無い。
そう思いながらも、リーサはお姫様を玉座の裏に呼び、こっそりと紙飛行機を日菜の所へ投げた。
紙飛行機には[私に任せて、日菜さんは話しを合わせて]と書かれており、リーサはお姫様を説得していた。
「日菜さんは優しい人が大好きみたいですよ」
「て事は魔法使い様はあなたの事が嫌いと?」
お姫様の言葉にリーサは拳を強く握った。
落ち着けリーサ、此処でお姫様を殴ってしまえば私まで処刑台に上がる事になってしまう。
リーサは得意の笑顔を作り、愛想を振り撒いていく。
「日菜さんはお姫様の事を好意に思っている筈です」
ああ、反吐が出そう。
例え嘘でもこんな言葉、口にしたくなかった。
「あら、あなたもそう思う?」
「フフン、分かっているじゃない」
「初めは私の愛の邪魔をする嫌な奴だと思っていたけど、中々見所がある奴だわ」
「気に入った、あなた私の侍女になるつもりは無い?」
無いに決まってんだろ。
そんな事を思いながら、リーサは丁寧に断り、助言を続けた。
「此処でお姫様の懐の深さを日菜さんに見せれば、きっとデートしたいと言う筈です」
「まあ、それは本当なの?」
「はい、更に魔王軍の幹部を許し、改心させたとあれば、周りの国からも一目置かれるかも知れません」
「一目……」
お姫様は想像する。
他国に尊敬の眼差しを向けられる事を……。
そして、弱小国と馬鹿にして来た愚かな国王共が私とお父様に頭を下げ挨拶する姿を……。
玉座に戻るとお姫様はフウカに罪状を言い渡した。
「あなたを無罪にします」
「良いのですか?」
「私はあなたの国を滅ぼそうとしたのですよ」
「何を仰います、悪いのは魔王の娘と影とやら、あなたは彼女達に逆らえなかったのでしょう?」
「それにあなたの上司のペンダ……、でしたっけ?」
「彼女を想う気持ちは本物、そんなあなたをどうして罰せられましょうか」
さっきまで死刑って言ってたじゃ無い。
どの口が言うのよ。
そう思うスタリエの横で日菜は感動し泣いていた。
緑も、そして勇者までもが感動している中、スタリエは思った。
馬鹿しか居ないのかしらと……。
「さあ、あなたは自由です」
「何処へでもお行きなさい」
「ありがとうございます」
「ありがとうお姫様」
「フウカはどう?」
「改心出来た?」
「いえ、分かりません」
そう言うフウカにカエンとスイは眉間にシワを寄せた。
二人が改心した時、人間を守らなきゃと思ったと同時に心が洗われる気がした。
晴れやかな気持ちになり、妙な暖かさがあった。
分からないと答える程、何も感じない事は無いのだ。
その事をフウカに説明するが……。
「そんなのは全然無かったわよ」
どうしてだ?
あれ程、優しいお姫様に許して貰ったのに何故改心しない?
そう悩む日菜達を見つめながら、スタリエは思っていた。
単純にお姫様が邪な考えを持っているからじゃ無いかと……。
「まあ、改心は出来なくても許したのですから……、ねっ、魔法使い様」
「んっ?」
「デートの日取りは何時にしましょう」
「えっ?」
「後それと、魔王軍幹部は許しましたが、勇者は許してませんので、死刑にします」
「えっ、何で?」
「私、この国を救ったよね?」
後に日菜はお姫様とデートを二回するからという条件で勇者を無罪にして貰う様、交渉するのだった。
そして王様はというと……。
(あれ、ワシこの国の王なんだけど……、この国で一番偉いんじゃけど……)
そんな事を考えながら、大臣達と一緒に立っていた。
第81話 完




