第78話[口だけなら……]
双眼鏡で遠くを覗くスタリエはスイの頭を軽く殴っていた。
「この馬鹿、味方にまで被害が出ているじゃない」
「すみません」
「……、ねえ、あなたのその雨、日菜の服めがけピンポイントで降らせる事は出来ないの?」
「はい?」
「何か言いました?」
「何でも無いわ……」
駄目よスタリエ、私は聖職者何だから邪な欲に負けてはいけないわ。
「ハァ、仕方ない」
「ちょっと行って来るから雨を止ませて」
「はい、分かりました」
遠くから観察していたスタリエだったが、魔王の娘にスイの酸の雨が通じないと分かり、自ら出向く事にする。
「どうやら全員集合した様ね」
「それと、幹部の中に裏切り者がいるみたいだけど……、後で始末しなくちゃね」
そう話す魔王の娘をスタリエは鼻で笑った。
「あんたみたいなのの下に付くなんて、幹部達も可哀想よね」
「何?」
スタリエの言葉に魔王の娘が怒りを露わにする。
そんな魔王の娘にスタリエは容赦なく罵声を浴びせた。
「だって私達が魔王城に行った時、あんた戦いに出て来なかったじゃない」
それを聞いて魔王の娘が笑い出す。
「あの時の私と今の私を一緒にしないでくれる?」
そう言うと魔王の娘はスタリエに幹部達と魔王の一部の魔力を引き継いだ事を話した。
「ハァ、結局は他人の力じゃない」
「よくそんなんで、自慢気に語れたわね」
「情けなくて涙が出そうだわ」
そう言うとスタリエは魔王の娘を見下し、ゴミを見る様な視線を向けた。
「随分と余裕あるじゃない」
「フフフ、いいわ」
「その醜い顔を更に酷くして、晒し首にしてあげるわ」
「そう、分かったわ」
「だけど私を晒し首にする前に自分の身を案じた方がいいわよ」
スタリエがそう言うと勇者は魔王の娘の背中を剣で切り裂く。
「なっ、勇者の癖に不意を付くなんて、この卑怯者」
「あんた馬鹿じゃ無いの?」
「戦場で油断している方が悪いのよ」
スタリエが小馬鹿にした様に笑う中、日菜は思った。
スタリエちゃんって、口だけなら、この世界で最強なんじゃないかと……。
第78話 完




