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第72話[雨]

城下町に現れた一体の魔物。

彼女は酸性の強い雨を降らすと声高らかに笑う。


「逃げても無駄よ」

「私の降らす雨は石をも溶かす」

「家が溶け、肉体が溶ける恐怖を抱き、死んで行きなさい」


そんな魔物を見つめながら、兜を被ったスタリエは溜め息を吐く。

出来れば使いたく無かった。

この魔法はデメリットが大きい上、魔力の消費が激しい。


「ちょっと、服が溶けてますよ」

「早く建物の中に避難しましょうよ」


そう叫ぶ海賊のボスにスタリエは五月蝿いと言うと魔法を唱え始めた。

すると辺りにピンク色のモヤが広がり、スタリエは兜を脱ぎ捨てる。


「あんたも早く脱いだ方が良いわよ」

「溶けた鉄が髪の毛にべったり着く可能性があるから」


「でも……」


「大丈夫、さっき唱えた魔法で人体はちゃんと守ってくれるわ」


ただ、同時に回復効果もあり、更にその恩恵は広範囲に居る全ての人が受けられてしまう。

病に伏せる老人から至って健康な子供達まで、この魔法をかけている間は回復し続け、敵の攻撃から守られ続ける。

その為、スタリエの魔力はかなりの量を消費され、すぐに底をついてしまう事に……。


「という訳だから、魔力回復薬の蓋を開けてくれる?」


「へっ?」

「でも服は溶けているんですよ、このままだと全裸に……」

「早く建物に避難した方が……」


「五月蝿い、早くしろ」


「はい」


そんなやり取りをしているスタリエに気付いた魔物は、スタリエに自己紹介をし始めた。

自分はスイだと名乗り、新しく魔王軍の幹部になった事を自慢気に話すスイをスタリエは睨む。


「あんたみたいな雑魚が幹部ですって?」

「笑わせないでくれる?」

「あんたみたいな雑魚、私一人で片付けてあげるわよ」


「出来るものならやってみせて下さいよ」


そう笑うスイの背後に兵士達が回り込み、一斉に弓矢を放った。


「痛っ、ちょっと待って、私は勇者の仲間とこれから一騎打ちをするのよ、邪魔しないでくれる?」


「あんなの嘘に決まってるじゃない」


「へ?」


「勇者や緑じゃあるまいし、私が本気であんたと一騎打ちする筈無いじゃない」

「只、あんたの気を引く為に言った嘘よ」


事前にお姫様に背後から魔物を狙う様に兵士達に伝える様、命令していたスタリエ。

兵士達は再び弓矢を引き、魔物を狙う。

弓矢は溶けながらもスイに命中し、複数の矢が刺さったスイは城下町へ落下し、次第に雨があがっていった。


「くっ、多勢に無勢なんて卑怯だわ」


そう叫ぶスイに向かって、鞭を構えるスタリエ。


「だからあんたは雑魚なのよ」

「ペンダなら、そんな事を言わず、向かって行くわ」


スタリエの言葉を聞いて、スイはペンダ達の姿を思い出す。

魔物の兵に囲まれながらも、影に立ち向かって行く姿、それを思い出して、スイは涙を滲ませるのだった。


「さて、私を見下ろした罪と魔王軍幹部を名乗った罪、償ってもらうわよ」


「お願いです、何でも言う事を聞きますから命だけは助けて下さい」


「何でもねぇ」


ニタリと笑うスタリエ。

スイを拘束し、スタリエは海賊達とナナンナ達、アルとカミガオウを連れ、近場のメルヘン王国へ向かって行くのだった。


第72話 完

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