第6話[最強]
我ながらナイス判断だと思う。
装備は始まりの国で一番高い物を購入したが、所詮は始まりの国。
あんなのを身に纏っただけで、勇者何て分からないだろう。
何故、黒騎士が村人全員を殺したのかは分からない。
もしかすると、この村が勇者と何らかの縁があり、それでって可能性もある。
だから、勇者じゃ無いと分かれば、私達の命が助かる可能性もある筈……。
一筋の希望に賭ける私だったが……。
「フッ、笑わせる」
「あの姿、どう見ても勇者だろ」
「何処が?」
「あんな装備、一般冒険者だって普通に着るよ」
思わず突っ込んでしまった。
首筋に大剣の剣先が当たり、私の首筋から血が滲み出る。
そして、黒騎士は鉄仮面を外し、顔を赤くしながら、私を睨んだ。
「……もん」
私は上手く聞き取れず、何を言っているのか聞き返した。
「見れば分かるもん」
「ヤダ、可愛い」
思いのほか可愛い反応に、思わず口に出してしまう。
よく見れば、私と歳が近く、可愛いらしい女の子だ。
「ひっ、可愛い……」
黒騎士は後退り、大剣を落とした。
これは助かるのでは?
そう思った矢先、黒騎士は鉄仮面を被り直し、大剣を拾った。
「これで良し」
「大丈夫、殺せる」
仮面を被る事で精神を安定させたのか、大剣は再び私の首筋に突きつけられた。
再び訪れるピンチに私は絶望する。
そんな時だった。
風が吹いたかと思ったら、凄い音と共に、私の前に一人の少女が現れた。
揺れるポニーテール。
赤いマント。
そして、脳内に情報が入ってきて、彼女が誰だか分かる。
「私の大剣が……、貴様、許さないぞ」
彼女は動じる事なく、黒騎士に刀を向けた。
「私の名前は赤青緑」
「この世界で最強の剣士だ」
カッコいい。
何だかオーラを感じる。
これなら助かるのでは?
私は期待を胸に緑ちゃんを全力で応援した。
第6話 完
第7話へ続く。




