第69話[綺麗なお花]
緑は魔物達の団と一緒に街や国を救って行った。
その戦いの中で実力をつけていく緑、的確に相手の急所を狙い、次々と魔物の兵を倒していく。
そんな中、緑は自分の手が魔物の血で染まっているのを見て、かつて勇者が緑に綺麗のままでいて欲しいと言っていた事を思い出して、心を痛めていた。
(何を今更、魔王を殺したあの日から、私の手は血で染まっている)
後悔はしていない。
こうする事で守れる人がいるのだから……。
「メルヘン王国まで後少しだ」
「私は必要な材料を調達して来る」
「それまで各自、街で休んでいてくれ」
「ミカナタ殿は休まなくて大丈夫なのですか?」
「私が休むのはメルヘン王国が救われた時だ」
「と言っても、森に囲まれた国、他の国と違い誰にも目を付けられず平和的に過ごしている事を祈ってはいるがな」
確かにミカナタ殿が言った様に平和的に過ごしてくれていた方が私も嬉しい。
だけど、それはあり得ないだろう。
ララ殿と影は人格は違えど同一人物。
ララ殿を通し、影はメルヘン王国の存在を知っている。
それどころか、お姫様の……、いやメルヘン王国の人達が悲しみの叫びを上げているのを見て、奴は喜んでいた。
そんな事を考えながら、緑は怒りで拳を強く握る。
そんな緑にマルカが話しかけて来た。
「緑……、ちょっと相談」
「何ですか?」
「メルヘン王国の王様とお姫様に私達が犯した罪を話そうと思うの」
影に騙され、メルヘン王国の人達を悲しみのどん底に落としたミカナタ達。
その事を話し、許して欲しい事をマルカは緑に相談していた。
「団長にも相談して、決断したの」
「やっぱり、許されないかな?」
「大丈夫ですよ」
きっと大丈夫。
だってこうして多くの人達を救っているじゃないですか。
悪いのは騙した影、そして騙されて傷つけてしまった事を反省し、今はメルヘン王国を救おうとしている。
その事を知れば、優しいお姫様はきっと許してくれる筈だ。
そうマルカに話し、緑は笑顔を向けた。
「もし許してくれなかったら、私も一緒に謝ります」
「だから元気を出して下さい」
「緑……、うん」
「あっ、お姉ちゃん達居た」
「捜したんだよ」
「はい、これ」
小さな少女に手渡される一輪の花。
それを渡し、少女は二人に「助けてくれてありがとう」とお礼を言った。
「此方こそ、お花をありがとう」
「気にしないで、家の庭で生えてた奴だから」
「えっ」
「それじゃ、バイバイお姉ちゃん達」
そう言うと少女は何処へ走り去って行った。
マルカと顔を見合わせ、笑い会う緑。
そんな緑の元に、ヒルが現れ二人に直ぐに出発する事を告げた。
「何かあったんですか?」
「ああ、メルヘン王国を囲む森が燃えてやがんだ」
それを聞き、緑の顔は青くなるのだった。
第69話 完




