第68話[真紅の薔薇の騎士団]
真紅の薔薇の騎士団団長は国王に現状を報告していた。
敵国の兵と魔物の兵、その二つの勢力が我が国を襲い、戦況はとても苦しい。
このままだと、この国が滅ぼされるのも時間の問題、その事を団長から聞かされ、国王は一人、嘆いていた。
「あの時、使者の話しに承諾しておけば良かった」
金を払いたく無いからと、団長の話しに乗るんじゃ無かった。
「何を言うのです、正義は我らにあり」
「悪しき勇者の思惑に死んでも乗ってはいけません」
「くっ……、うむ……」
正直、王様は怒鳴りたかった。
正義の為に死にたくは無いと、だがそう怒鳴って兵士達がこの国を捨て逃げてしまえば……。
溜め息を吐き出し、敵国にどう許して貰うか悩む国王の元にリーサが現れた。
「初めまして王様、リーサと申します」
「勇者さんから伝言を預かっております」
そう話すリーサを団長が睨む。
「勇者からの伝言だと?」
「貴様、勇者の仲間か?」
「何をしている、此奴をさっさと捕らえぬか」
そう叫ぶ団長に王様が黙る様に怒鳴ると、リーサからどんな伝言を預かっているのか尋ねた。
「正直、助けたくは無いけど助けてあげると仰っていました」
「じゃあ、魔物の兵を引き上げてくれるんじゃな」
「えっ?」
「ああ、そういう事か」
一瞬、王様が何を言っているのか理解出来なかったリーサだったが、直様状況を理解し、リーサは真実を王様達に話した。
「何と、じゃあ勇者殿は関係ないと?」
「はい、影とか言う人物が各国の王様を誑かし、その誑かされた王様達が勇者の名を語り、世界中で戦争を起こしているみたいです」
「そんな……」
真実を知り、団長は自分を恥じた。
「陛下、ご報告です」
「勇者、魔法使い、両者の力添えがあり、戦況は良くなっております」
「殆どの魔物達は撤退し、我が兵が敵国に攻め入るのも時間の問題かと思われます」
「本当か?」
「はい、それで戦いを終えた勇者様達は此方へ向かっている様ですが如何致しましょう?」
「手厚く出迎えてくれ」
そう言って王様は勇者と日菜を招き、感謝の言葉を述べた。
そして、騎士団団長は日菜達に頭を下げる。
「勇者殿、魔法使い殿、助太刀感謝致します」
頭を下げながらそう言う団長に日菜は慌てて頭を上げる様に言い、王様に挨拶を済ます。
「それで王様、出来ればで良いのですが、食料と飲水を分けて頂けないでしょうか?」
戦争や魔物達の侵略から守りながら旅をしている為、クエストを受け、報酬を受け取る時間が無い。
そう日菜が説明すると、王様は快く食べ物と飲水を持って来る様、兵士達に指示を出した。
「ありがとうございます」
「いや、礼を言うのは此方の方さ」
「勇者殿、魔法使い殿、そしてリーサ殿、本当にありがとうございました」
こうして、一つの国を救った日菜達は始まりの国を目指し、馬車を走らせるのだった。
第68話 完




