第66話[ロイちゃんです]
「あんた達、何やってんの?」
スタリエのその言葉に勇者が笑顔で答える。
「ご飯食べてるんだよ」
「スタリエちゃんも食べる?」
そう答える勇者に対しスタリエは激怒した。
顔を赤くし、額に血管が浮き出る中、自分がどれだけ大変な思いをしてきたか、スタリエは叫びながら日菜達に訴えかけていた。
「魔力が切れる度に魔力回復薬を飲んで、それで街の中を走り回り、どれだけ大変だったか……」
「それでご飯食べるの?」
「食えるか、魔力回復薬を飲み過ぎてお腹ぎタプンタプンなのよ」
「フフフ、タプンタプンって何だか太っているみたい」
「この馬鹿、絶対に殺す」
勇者とスタリエの喧嘩が始まり、日菜と緑はリーサを連れて少し距離を取る。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「擦り傷程度何だし」
「この馬鹿、街がこれだけ崩壊しているのに病院がちゃんと機能している訳無いじゃない」
「転んで擦り切れた程度ならまだ良いでしょうけど、魔物の爪や牙で出来た傷はちゃんと治療しないと駄目でしょ」
そう叫び、机に置いてあった回復薬を投げるスタリエに対し、勇者はそれを避けていく。
流石に止めた方が良いと思った日菜は、スタリエを背後からギュッと抱きしめた。
息を切らし、落ち着きを取り戻すスタリエ、そんな中、ナナンナとロイが宿屋へ戻って来る。
「ごめんねスタリエちゃん」
「別にもう良いわよ」
抱きしめ合う二人を見て、ナナンナはリーサに何があったのか尋ねる。
リーサは一部始終をナナンナとロイに伝え、日菜達は割れた瓶の破片などを掃除する事に、その間、日菜はスタリエにまだスタリエ食堂が残っている事を話した。
「へぇ〜、そうなんだ」
「リーサとナナンナ、後はもう一人バイトとして雇ったのね」
そう言ってスタリエはロイはクビにしたのかリーサに尋ねると……。
「えっ……、と……」
「まあ、仕方ないわね」
「あの子、ちょっと臭かったし」
その言葉を聞いてロイは下唇を思いっきり噛む。
それを見て、日菜は彼女がロイ何だと気付き、慌ててフォローした。
「でも、悪い子じゃないよね」
「いや悪い子でしょ、直ぐに人を呪うし、偶に陰に隠れて仕事をサボるし」
「体臭がキツくて鼻に手をやると、過剰に反応……」
止まらない悪口に日菜は慌ててスタリエの口を塞いだ。
そんな中、ロイがスタリエの髪を抜く。
「呪ってやる」
「へっ?」
「あの、彼女がロイちゃんです……」
この後スタリエは地獄を見るのであった。
第66話 完




