第64話[緑の苦悩]
勇者や日菜が魔物の兵を順調に討伐している中、緑は一人、苦戦していた。
右手と右足を失った分、緑のステータスは大幅に下がり、その所為でいつもの様な動きが出来ず、敵の攻撃を交わす事が困難になっていた。
そんな緑の背後に一体の魔物が近づいて行く。
普段なら気配で分かる緑も、今は目の前の魔物に集中していて気が付かない。
そのまま緑を殺そうと斧を振り上げる魔物の喉元にカミガオウが喰らい付いた。
体を回転させ、魔物の喉を食い破るとカミガオウは緑を助けに動く。
「大丈夫か緑」
襲い来る魔物の攻撃を交わし、ナイフで急所を突きながらアルが緑に近づいていく。
「はい、まだ体が馴染んで無くて……」
「そんなんで戦えるのか?」
「ええどの道、場数を踏んで強くなるしか無いですからね」
それに以前の私とは違い、今なら魔物達にダメージを与える事が出来る。
レイナ殿が作ったこの義手なら敵に攻撃が通るんだ。
「まあいい、無理すんなよ」
「もう時期、マルカが助けてくれる筈だから」
何処かの民家の屋根に登り、マルカは瞑想していた。
勇者の力になろうと始めた旅、だが影が本気でこの世界を滅ぼそうとしているのか、世界各地で魔物の兵や欲深い国の王達が戦争をお越している。
「私達が強くなったのは弱者を守る為」
目を見開き、マルカは魔物達の死体を操りはじめる。
勇者や日菜が多くの魔物を倒していた分、勇者達の兵力は増大し、魔物達の兵は一気に壊滅状態まで陥ってしまう。
「引け、これ以上は無理だ」
指揮官の魔物の指示の元、魔物達の兵は後退して行く。
「ふぅ、何とか救えたね」
その場に座り込む勇者、日菜も魔力補給の為に魔力回復薬を一気に飲み干した。
「ミカナタさん達が来た時は驚いたよ」
日菜達と合流する前に、一つの国を救っていたミカナタ達、その時に捕らえた王が影に唆されていた事を喋り、慌てて日菜達に報告しに向かっていたのだ。
「勇者様達と共に戦えた事、感謝します」
傷だらけのナナンナがそう言って片膝をつく。
それを見た日菜がどうして傷だらけなのか尋ねると……。
「僧侶様の回復魔法が終わり、居ても立っても居られなくなり、再び戦場に出向いた所存です」
「こんな戦馬鹿、見てられないわよ」
「ほらっ、勇者も日菜も緑も休んでいる暇何てないわ」
「回復薬を配って回って」
そう言うとスタリエは大量の回復薬を日菜達に渡すと、負傷者に回復魔法をかけに街を走り回って行った。
スタリエに言われた通り、回復薬を配ってまわる日菜達。
そんな中、日菜はリーサと再会するのだった。
第64話 完




