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第63話[オジ女]

勇者に置いて行かれたジジルガはリーサ達が住んでいる街に戻り、リーサの開くお店で働いていた。

日菜達がいつ戻って来てもいい様に日菜達が経営していたお店をリーサが引き継いだのだ。

とはいえ、スタリエが作る味とは程遠く、店を続ける事が出来ないのではと落ち込む事もあった。

そんなリーサをナナンナとロイが慰め、そして何とかこれまでやって来れた。

そして、魔王軍幹部の処刑を見たナナンナは一人、死んだ魚の様な目をしていた。


「そっか、私が居なくても勇者様は魔王を倒したのか」


「落ち込ま無いでナナンナちゃん、これでまた日菜さん達に会えるんだから」


そう励ますリーサにナナンナは弱々しく笑いかけ、お店の開店準備に取り掛かる。


(ナナンナちゃんも気になるけど、あの魔王軍幹部に居た魔物、ペンダさんだよね?)

(どうしてペンダさんが……)


少し謎は残るものの、日菜と再会出来る喜びでリーサは深く考えるのを止め、いつもの様にお店を開くのだった。


それから数日後、リーサはバーで荒れていた。


「遅い、何で日菜さん達は私達に会いに来てくれないの?」


ジュースを飲み、酔っぱらいの様に騒ぐリーサをナナンナ達が宥める。


「落ち着いて……」


「これが落ち着いていられるかっです」


リーサの叫びにロイが怯える中、ナナンナは酒を飲んでいた。


「まあまあリーサよ、勇者様達も各国の王に挨拶するので忙しいのだろう」


「何よ、私より王様の方が大切なの……」


そう言って泣き出すリーサを見ながら、ナナンナは酒を一気に飲み干した。


(ふむ、彼女がお酒を飲む事が出来れば、本当の酔いで、嫌な事も忘れられるのだが……)


ナナンナは酒を新たに注文し、彼女に慰めの言葉をかけてやる事にする。


「いいかリーサよ、大切だから最後にするのでは無いか?」


「どういう意味?」


「最後に訪れて、そのままこの街で暮らすつもりとか……」


ナナンナのその言葉にリーサは顔を赤らめ、ニタニタと笑い出す。


「まさかそんなつもりだった何て……、どうしようナナンナちゃん、一緒にお店を盛り上げようって告白されたら……」


(意味が分からん)


そう思うとナナンナは新たに来た酒を飲み干し、金を机に置いて、家に帰る事を二人に告げた。


「え〜、まだ飲もうよ〜」


「明日も仕事だろ?」

「それに早く帰らんとジジルガの姿に戻ってしまう」


そう言い残し、ナナンナは家に帰って行った。

そして翌日、リーサはいつもの様に店を開け、お客さんから注文を受けた料理を厨房で作っていた。


ねえ日菜さん、日菜さんは今何をしているの?

日菜さんが居ない間に、このお店も大分変わったよ。

私の料理を美味しいと褒めてくれるお客さん。

そして新たに看板娘になったナナンナちゃん。


「今日も可愛いね」


「イヤん、ありがとうございます」


中身おっさんなのに可笑しいよね。

そして驚くのはロイちゃん。

彼女を見たら皆んな驚くと思うわ。


「ロイちゃんも可愛いね」


「え〜、そんな事無いですよ〜」


「ロイちゃん、水」


「ハイッ、直ぐにお持ちしますね〜」


あれから毎日お風呂に入り、髪を整え明るくなった。

きっと、日菜さん達が見たら腰を抜かして驚いちゃうだろうね。

あ〜、早く日菜さん達に会いたいな〜。


そんな平和な街にある日突然、魔物の群れが襲いかかって来た。

街の人達は怯え、家に避難する中、ナナンナが斧を持って立ち上がった。


「リーサは街の人達を安全な所へ、私はこの斧で魔物達を倒して行くわ」


「無理よ、ナナンナちゃん一人じゃ勝てないよ」


「だったら私も戦う」

「キシシシシ、呪いの怖さ思い知らせてやるわ」


「えっ……」


ロイの登場で一気に不安になるリーサ、そしてその不安は的中してしまう。

ロイがあっさりと魔物達に殺されかけてしまったのだ。

そんなロイを負傷しながらも助けるナナンナ。


「ダァ〜、いいから早くこの足手纏いを連れて街の人を安全な所へ避難させてくれ」


「なっ、誰が足手纏いよ」

「呪うわよ」


口から血を垂らしながら喋るロイをリーサは引きずりながら、言われた通り街の人を非難させに向かう。


「ナナンナちゃん、死なないでね」


「フッ、誰に言っておる」

「こんな姿をしてもジジルガの強さは変わらぬわ」


だが、多勢に無勢。

直ぐに戦況は悪化してしまう。

それでもナナンナは戦うのをやめなかった。

第二の故郷と決めたこの街を、リーサとロイの思い出の場所、スタリエ食堂を守る為、彼は……、いや彼女は戦い続けた。

どれだけ倒しただろうか、ナナンナは額から流れる血で視界をやられ、体力も限界にきていた。

動きも鈍くなり、魔物の攻撃も交わす事が出来ず、ナナンナは遂に片膝を地面へつけてしまう。


(ここまでか何て言わない)

(諦める位なら魔物達を一匹でも多く殺すんだ……)


そう思った時だった。

勇者が駆けつけ、ナナンナの前の魔物を斬り裂いていく。


「よく頑張ったね、後は私達に任せて」


「勇者様、どうかこの街をお守り……」


力尽きて倒れるナナンナをスタリエが回復魔法で治療していく。

その間に勇者と日菜、そして緑が魔物達に立ち向かって行くのだった……。


第63話 完

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