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第62話[生命の小麦]

「さて、勇者も元に戻った事じゃし、皆んなに重大な話しがある」


そう言うとサーベリックちゃんは、ララちゃんの肉体を作るのに必要な材料が書かれた紙を机に置いた。


「さて、今回私が作るのは魂の無いホムンクルスなのだが……、残念ながらホムンクルス自体、錬金術での成功例は無い」


そう言うとサーベリックちゃんは自分の生みの親であり師匠である人物について語り始めた。


最悪の時代を生きたサーベリックの父とも呼べる初老の男性はホムンクルスについて研究をしていた。

この研究が実を結べば、ホムンクルスを兵として運用できるだろう。

さすれば、我が愛国、ブランガガルも更なる発展が可能だ。

そう思い、ホムンクルスについて研究し、生まれて来たのがサーベリックだったと言う。

だが、彼女はホムンクルスと呼べるには程遠い存在だった。

男の精子と女の卵子、それを体外で受精させ、培養液の中で赤ちゃんになるまで放置して出来た存在。

それがサーベリックなのだ。


「私が生まれてから、師匠はホムンクルスの研究をやめた」

「私への罪悪感なのか分からぬが、戦争に役立つ道具を作り、大金を残してこの世から去って行ったよ」


サーベリックちゃんを育てている内に親心に目覚めたのだろうか?

この話しをしているサーベリックちゃんの表情を見る限り、他の子と同じ様に大切に育てられたのだろう。


「今のホムンクルスの研究はそれ以上の成果は出ておらぬ」

「そんな中、私が師匠を超えようとホムンクルスの材料を考えたのだが……、残念な事にどれも入手難易度が高い材料ばかりでな……」


そう言ってサーベリックちゃんはその中でも入手難易度が高い、生命の小麦について話し始めた。

人里離れた森の一角に麦畑があり、そこで二十年に一度、生命の小麦が一本だけ生えるらしい。

その小麦は他の麦と見分けがつかず、更には何万もの麦の中から見つけなければならなく、かなりの重労働だ。


「先ず、その小麦がある森もよく分からない上に見つけても麦畑に行くのは難しいとされておる」


辿り着くのも困難な上に、二十年に一度の期間限定でその麦畑を見つけ出すのも困難か……。


「成る程、それは大変……、んっ待てよ」


私はバックの中から一本の小麦を取り出した。

かつてフルーツ盛り合わせから始まったワラシベ長者。

そこから手に入れた一本の麦。

ダメ元でこれが生命の小麦じゃ無いか尋ねてみると……。


「凄い、これじゃ」

「これが生命の小麦じゃ」


やっぱり、あの時の幸運状態は切れて無かったんだ。


「流石日菜、あんたの貧乏性が役に立ったわね」


えっ、貧乏性……。


「そうだね、私なら要らないって言って捨てちゃうもん」

「流石日菜ちゃん」


何か褒められている気が全然しないのは私の気のせいだろうか……。


「成る程、日菜殿は使った綿棒はまだ使えるからと言って、残すタイプの人何ですね」


緑ちゃん、何を言っているの?

ちゃんと捨てるタイプの人だから、耳掃除して全然着いて無くても捨てるタイプの人だから……。


「よし、そうと決まれば次の材料探しの旅に出発だね」


何だろう、何か納得がいかない。

そんな不満を抱きつつ、私は材料探しの旅に出るのだった。


第62話 完

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