第5話[絶対絶命]
外へ出た私達は固まっていた。
村に広がる血の匂い。
無残な村人達の遺体。
その光景は余りにもグロく、私は思わず口から虹を吐き出してしまった。
何が起きているのだろう。
私は混乱しながらも、懸命に考える。
あの黒騎士……、大剣に血がついてなかった?
えっ、て事はこれ全部……。
呑気に吐いている場合じゃない。
あの黒騎士はまだ私達を追いかけているのだから。
私は勇者にその事を伝え、逃げる様に言った。
だが勇者は首を横に振り、覚悟を決める。
「日菜ちゃん、この戦い……」
「いや違うね、この殺し合いが終わったら、私と結婚してね」
そう言い残し、勇者は黒騎士と対峙した。
明確な死亡フラグに私は涙する。
剣を握る手に力を入れ、勇者は雄叫びと共に黒騎士めがけ、突っ込んで行った。
だが、勇者の攻撃は黒騎士に交わされ、代わりに黒騎士の攻撃を受けた勇者の体は吹き飛び、民家に激突する。
その、衝撃で民家は崩れ勇者は瓦礫の下敷きに……。
「ああ、私はツイてるなぁ」
「こんな所で勇者と出会える何て、魔王様の手土産として勇者の首を持ち帰ろう」
私は震えながらも黒騎士に向かい両手をかざし、呪文を唱えた。
黒騎士の足元に植物のツルが生えてきて、そのツルは黒騎士の足に絡みつく。
そして私は再び、呪文を唱えた。
黒騎士の真上にゲートが開き、そこから凄まじい雷が落ちてくる。
だが、黒騎士には効かなかった。
ふと、負けイベントなのでは?と思ってしまう。
まだこの村も序盤の方だし、周辺の魔物も弱い。
そんなレベルも上げにくい場所で、こんな強い敵が現れるって事は、きっと負けイベントなのだろう。
そう思い、私は安堵した。
きっと、誰かが助けに来てくれるか、死んだと思い何処かへ消える。
きっとそんな感じで助かるだろう。
そう思っていたのだが……。
「勇者を見つけ興奮し、我を忘れるなんて私もまだまだだな」
黒騎士はそう言うと私の前に立った。
「勇者だけじゃ無く、その仲間の首も刈らないとね〜」
えっ、ヤダ怖い。
私は地面に倒れ込んだ。
「何をしている?」
「死んだ振りです」
「早く見逃して下さい」
「ああ、本当に死んだのを確認したら見逃してやるよ」
「それって見逃したとは……、ひぃ」
顔を上げた際、黒騎士の大剣が私の首元へ向けられた。
えっ、コレ本当に負けイベントなの?
絶対に違うよね?
だって誰も助けに来ないもん。
ホラッ、大剣をちょっと前にやるだけで、私の首切れて死んじゃうよ?
いい加減、誰か助けてよ。
あっ、そうだ。
私はある事を閃き、黒騎士を見つめながら、嘘をついた。
「あの、私達、勇者とかそういうのじゃ無いです」
第5話 完
第6話へ続く。