第61話[常闇のグローブ]
「という訳で勇者は水晶になりました」
皆んなが水晶になった勇者の所に集まる。
そんな中、日菜とスタリエは義手と義足を着けた緑を見て喜んだ。
「凄い、出来たんだね」
「綺麗な仕上がりね、流石レイナだわ」
二人に褒められて照れるレイナだったが、直様彼女は自分が力不足だった事を二人に告げた。
軽量し尚且つ指などの関節を人体と変わり無く作る事が出来たのだが、それを緑の体に着けても動く事は無かった。
どうやら脳からの指示を受け取る事が出来ず、義手義足を動かす事が出来なかったらしい。
そこでサーベリックの錬金術を使い、それが出来る様に改良されたとか。
「だから殆どはサーちゃんのお陰何です」
そう話すレイナの手を握り、緑が笑顔を向ける。
「そんな事ありません」
「この素晴らしい手足はレイナ殿のお陰でもあります」
「本当にありがとうございました」
終始和やかなムードの中、勇者が叫んだ。
「私の事、忘れてない?」
「私だって緑ちゃんの新しい手足、見たいのに」
「ごめんごめん、でもこれ、どうやって戻せばいいのかな?」
悩む日菜の元へ、申し訳無さそうにメリナが現れた。
常闇のグローブという、吸魂の水晶に魂を吸われない為の道具を渡し忘れた事を謝り、勇者の魂を元に戻す事を日菜達に約束する。
「いい、吸魂の水晶は特殊だから割れたら二度と修復する事は出来ないわ」
同時に何度も魂を吸い出す事が出来ず、大抵は一、二回で壊れてしまう事を話すメリナ。
それを聞いていて、日菜とスタリエは思った。
常闇のグローブ、必須だったじゃんと……。
「えっ、て事は勇者の魂を肉体に戻したら壊れちゃう可能性があるって事ですか?」
「可能性は無くは無いわ」
「ふっざけないでよ」
スタリエの叫び声が辺りに響き渡る。
「こっちには日菜が居るのよ」
「えっ」
「確実に割れるに決まっているじゃない」
「苦労して手に入れたのに、何ふざけた事を言っているのよ」
「いや、何も確実に割れるとは……」
「割れるわよ」
キッパリと答えるスタリエだったが、結果水晶は割れる事は無かった。
「日菜、私は信じていたわ」
「水晶が割れる事は無いってね」
「オイッ」
第61話 完




