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第60話[憑依]

私達は勇者の肉体を二人で担ぎながら山を何とか降りて行く。

そして氷の国の女王様に事の経緯を説明した所、予想外の返答が返って来た。


「水晶を割れば勇者様の魂は解放され、元の肉体へと帰って行くと思うのですが……」


あっ、確かに……。

物語りとかでも魂が解放され、騙された旅人にその魂が憑依するって感じなのがよくあるわ。

スタリエちゃんが変な事を言うから、てっきり勇者が死ぬものだとばかり思っていたよ。

でも……。


「サーベリックちゃんの錬金術で水晶、元に戻せるかな?」


「てか日菜、コイツが素直に自分の肉体に戻ると本気で思っている訳?」


「えっ、どういう事?」


「決まっているじゃない、日菜の肉体に憑依してエッチな事をやりまくるに違いないわ」


「いや、やらないよ」


水晶越しに勇者がそう反論する。


「本当に?」


「当たり前だよ、日菜ちゃんの気持ちを無視して、そんな酷い事、する訳無いじゃない」


勇者……。

そうだよね、氷の国で私が可笑しくなっても、エッチな事をせずに助けてくれたもんね。

私は迷い無く、水晶を持つ手を振り翳した。

その時だった。


「まあ、何かの手違いで憑依しちゃったら、仕方ないけどね……」


勇者のその言葉を聞いて、私は振り翳した手を止める。

危なかった。

後少しで水晶を割る所だったよ。

完全に私に憑依する気だと悟ってしまった私は、水晶玉をスタリエちゃんに手渡した。


「えっ、どうして私に渡すのよ?」


「私が隠れてから割ってくれる?」


「は?」

「絶対に嫌何ですけど……」


「スタリエちゃんの体か、フヒヒ、思いっきり貶し文句を言いながら、足を舐めちゃお」


「ひっ、気持ち悪い」


スタリエちゃんが思わず水晶玉を落とす。

私は慌ててそれを受け止め、何とか水晶玉を落とさずに済んだ。


「チッ、失敗したか」


まさか勇者の奴、わざとスタリエちゃんに気持ちの悪い言葉を言って、手を離すのを狙っていたとか?


「ごめん日菜」


「ううん、大丈夫だよ」


「くそ、この馬鹿勇者め」


スタリエちゃんはそう言うと、意識の無い勇者の体を鞭で叩き始めた。

すると、水晶の中の勇者が叫ぶ。


「止めて、そんなご褒美、せめて意識がある時にして」


成る程、ドMの勇者にとって痛みを伴わない鞭打ちは返って苦痛なのか……。


「ねえ日菜、折角だから女王様に割って貰いましょうよ」


「えっ」


「そうだね女王様、私達は隠れますんで、その時に水晶玉を割って下さい」


「ちょっとお待ちを……」


「「それじゃ、よろしくお願いします」」


そう口を揃えて歩き出した私達を女王様は甲高い声を出し、私達を呼び止めた。


「私には夫と子供が居ます」

「どうかお許しを……」


流石にそう言われてしまっては、どうする事も出来ず、私達は一度、このままブランガガルへ帰る事にする。


「あの、でしたらマッチョの男性を借りても良いですか?」

「馬車まで勇者を運びたいので……」


「日菜ちゃん⁉︎」


「それならブランガガル王国まで荷物持ちとして連れて行って下さっても構いません」

「駄賃は多めに渡して置きますね」


「ちょっと待ってよ二人共」


水晶の中から勇者が叫ぶ。


「日菜ちゃんはいいの?」

「何処ぞの馬の骨かも分からない男に私の体がおんぶされるんだよ」

「日菜ちゃんの物である私の可愛いオ◯パイがそんな男の背中に当たるんだよ」

「日菜ちゃんはそれでもいいの?」


「いいよそんなもん」


「えっ?」


「第一、鎧着ているから当たらないよ」

「それじゃ女王様、マッチョの手配をよろしくお願いします」


こうして勇者の体はマッチョのおじさんに運んで貰う事に。

終始叫ぶ勇者を目の当たりにして、スタリエちゃんは何故だか笑っていた。


「プププ、勇者の奴、ザマァないわね」


第60話 完

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