第58話[もういいから]
マグマの国に着いた日菜達は直様兵士に囲まれて牢屋に入れられていた。
「はいはい、不幸体質はもういいから」
「ごめんね日菜ちゃん、流石に私もちょっと……」
スタリエと勇者に責められる中、日菜は体を縮めて二人に謝る。
「まあ、手元に武器があるから別にいいけど」
「そうだね、これなら直ぐに脱獄出来そうだよ」
鉄格子を剣で斬り脱獄を図ろうとする勇者だが、足音が聞こえ、直様武器を隠し、何事も無かったかの様に会話をしてその場を過ごす事にする。
「おお、まだ脱獄しておりませんでしたか」
マグマの国の大臣がそう言うと日菜達の牢屋の鍵を開けた。
「兵士達から、いつでも脱獄出来る様に武器を取り上げなかったと聞いておりましたので、もう脱獄したものとばかり思っていましたが、いやはや我が国の王が御無礼を働き申し訳ありませんでした」
そう言うと大臣は何故、日菜達が捕らえられたのか、その理由を説明した。
上空に浮かぶモニターで雪花が死ぬのを確認した王は激怒し、勇者達を罪人として指名手配したらしい。
流石の兵も王様には逆らう事が出来ず、形だけ勇者達を捕らえ、今に至るのだとか……。
「誤解だよ」
「私達は雪花ちゃんを殺してないよ」
そう言うと勇者は大臣に事情を全て説明した。
「何とそんな事が、早く王様に話してこねば」
「私達も行くよ」
そう言って勇者とスタリエが牢屋から出ようとした時だった。
日菜が二人の肩を掴む。
「おい、待てコラ」
「日菜ちゃん、何か言葉使いが汚い感じがするよ」
「そうよ日菜、スマイルスマイル」
「眉間にシワ何てノンノノンよ」
日菜の表情は変わらず、代わりに二人の肩を掴む手に力が入り、二人は苦痛で呻き声を上げてしまう。
「私の不幸体質、関係無かったよね?」
「よしっ、私が王様の顔面をビンタして上げるわ」
「駄目だよスタリエちゃん、グーで無いと意味がないよ」
そう言うと二人は日菜の手を振り払い、王様が居る玉座を目指した。
「ちょっと二人共……」
「大丈夫だから、勇者の言う通りグーで殴るから」
「しかも三発だよ」
「日菜ちゃんの為に頑張るからね」
二人共何を言っているんだろうか?
私は只、謝って欲しいだけなのに……。
つか、何で二人共謝ってくれないの?
ごめんなさいって言うだけじゃん。
そう思い、二人に声をかける日菜だったが、二人は猛スピードで早歩きをして、日菜を置いて行くのだった。
「あれ、何か泣けてきた」
第58話 完




