第57話[自然の脅威]
日菜達は氷の国に来ていた。
相変わらず寒いこの国で女王様が日菜達を招き、盛大に祝福するのだが、今はパーティーをしている場合では無い。
事情を説明し、日菜達は氷の国にある山の山頂を目指して山を登っているのだが……。
「死ぬ」
スタリエがそう叫ぶ中、日菜は完全に凍っていた。
「取り敢えず湯船に浸けて氷を溶かさないと」
「二人で日菜を抱えて一度下山するわよ」
お城のお風呂を借りて、三人は体を温める事に……。
「予想外の寒さだったね」
「めちゃくちゃ吹雪いていたわ」
日菜とスタリエがそう話す中、勇者はどうしたら良いのか一人考える。
流石にあの状態で山頂を目指すのは自殺行為だ。
幾ら異世界で身体能力が上がっているからといって、日菜達は完全に自然の脅威を舐めていた。
一度、女王様に相談してみようと三人は湯船から立ち上がったのだが……。
「日菜ちゃん、丸見えで鼻血が……」
咄嗟に湯船に浸かり体を隠す日菜。
そんな日菜に対してスタリエが叫ぶ。
「勇者だけずるい、私にも見せなさい」
スタリエの叫びも虚しく、日菜は近くにあったタオルで体を隠すと一人、脱衣所まで走って行くのだった。
「成る程、山は猛吹雪で行けないと……」
氷の国の住人でもあの山には誰も近寄らない禁忌の地。
日菜達の話しを聞くまで、氷の国の女王も、どの様な場所なのか見当もつかないでいた。
「やはり氷には炎、一度マグマの国に向かっては如何でしょう?」
「あそこならば、何か寒さに対抗できる策が見つかるやもしれません」
えっ、あのセクハラオヤジの国に行くの……。
日菜達は凄く嫌そうな表情を浮かべるも、ララの為を思い、一度マグマの国へ行く事を決意するのだった。
第57話 完




