第53話[団結]
勇者達は森の中でこれからの事を話し合っていた。
まず最初に意見を出したのは緑で、彼女は皆んなに一度、ブランガガル王国に行かないかと提案していた。
友人のレイナに義手と義足を作って貰いたいのだと、日菜達に話す。
「確かに、先ずはブランガガル王国に行くべきだよね」
あそこには錬金術師のサーベリックもいる。
そして何より、姫であるアーネはペンダの事を知っており、あの中継が私達の仕業では無いと信じてくれる筈だ。
一同は頷き、緑の案に乗る事にする。
そして、四人は身支度を済ませ、団長のミカナタに旅立つ挨拶をした。
「もう行くのか?」
「魔王も倒され、平和な世界になったんだし、ゆっくりして行けば良いだろ」
ミカナタの言葉に勇者が「それは違うよ」と言って事情を説明した。
「成る程、そういう事があったのか」
「チッ、許せねぇ」
「私達を騙していたのは影って奴だったのか」
「団長、私達も勇者達と一緒に旅をして影を倒しましょう」
ヒルのその提案に勇者が断りを入れる。
「何で?」
「何でって……、そりゃ弱いから……」
勇者の言葉に怒る団員達、そんな中、マルカが日菜の所にやって来た。
「日菜も……、私達が弱いと思ってる?」
「うっ……、ごめん」
「また蘇生薬にお金をかけるのはちょっと……」
日菜の言葉にショックを受けるマルカ。
場が騒がしくなり、団長のミカナタは溜め息を吐いて、机を思いっきり叩く。
「皆んな落ち着け、勇者さん達は私達が死なない様、言ってくれているんだ」
「考えてもみろ、魔王を操る相手に私達が勝てると思うか?」
誰も何も答えない。
弱者が集まって出来た団。
影を倒せる実力があるのなら、メルヘン王国の事件は起きなかっただろう。
「勇者さん、私達は何も協力出来ませんが、どうか無事だけは祈らせて下さい」
「うん、ありがとう」
「そうだ、今此処で約束するよ」
「影を倒して、人と魔物達が仲良く暮らせる世界を作る」
「だからミカナタ達も、それまで我慢して、必ず幸せになれる世界を作るから」
そう言って勇者達はブランガガル王国を目指して旅に出た。
そして……。
「さてお前達、旅支度をするぞ」
ミカナタはそう言って、団員達に準備をする様に指示を出した。
「団長、変」
「そうだよ、影に勝てないんだろ?」
マルカとヒルが文句を言う中、ミカナタは笑っていた。
「当たり前だろ」
「影には勝てないが、魔王軍の兵士達ならどうだ?」
「今こそ強くなった我らの団の力、見せようぞ」
「へへっ、流石団長だぜ」
団長のミカナタを中心に団員達がやる気を見せる。
こうして魔物達の団は安住の地に決めた森を捨て、魔王軍の兵士達と戦う為に旅に出るのだった。
第53話 完




