第51話[英雄]
全国中継されている中、ガチュミと雪花は死んだ。
次に犠牲になったのはサライヤだった。
彼女は肉を削ぎ落とされ、痛みと苦しみの中、悲鳴を上げて死んで行く。
「どう?」
「街の人達の反応は?」
「はい、凄い歓声です」
でしょうね。
その為に魔王を使い、幹部達に国や街、村を滅ぼす様に指示を出したのだから。
魔王軍幹部に対しての人々の怒りは計り知れないでしょう。
友好国を滅ぼされ、領地にしている街や村を滅ぼされた。
「この中継を通じ、私は勇者の仲間として魔王と影、そして幹部達を捕らえた事を全世界に流す」
するとどうだろう。
こんな残酷な事をしても、私は英雄として全世界の人間達から崇められる事になる。
ねえ、勇者。
あなたもこの中継を見ているのかしら?
大好きなペンダ達が殺される姿を見てどう思う?
ああ、今のあなたの顔を見れないのが残念だわ。
「さて、一番の功労者のペンダには特別に楽に殺してあげるわ」
あなたが勇者達と仲良くなってくれたお陰で、こうして最高のショーを開く事が出来た。
あなたが勇者達と出会い、旅をする事になってから、私はララの中でずっとこの時の事を考えていた。
勇者が私を殺さなかった時の事を……。
「さあララ、出番よ」
影はそう言うと、ララと人格を入れ替える。
ただし、あくまで体の支配権は影にあり、ララは影に操られる様に斧を握らされた。
「ごめんなさい」
そうペンダに謝るララ。
そんなララにペンダは優しく微笑んだ。
「気にすんな、悪いのはお前じゃ無い」
「くそっ、影の奴、悪趣味が過ぎるぜ」
その言葉を最後にペンダは首を斬り落とされた。
ララの叫びが室内に響く。
噴き出すペンダの返り血を浴びながら、人格は影へと戻って行った。
「最後はあなたね、黒騎士」
斧を投げ捨て、剣を握る。
「あなたは本当に従順な犬だったわ」
「だって、魔王に自慢の娘だって言わせれば、何だって言う事を聞いたんだもの」
大口を開けて笑う影に向けて、黒騎士は唾を吐いた。
それが影の口の中に入り、影は不快そうに床に唾を吐きかけた。
「くたばれバーカ」
挑発的にそう言うと黒騎士は影に向かって舌を出した。
その舌を剣で斬り落とす影。
だが、黒騎士は痛みに顔を歪める事も無く、影を睨みながら、出血多量で死んでいった。
「何てくだらない殺し方かしら」
自分自身に嫌気がさす。
くだらない挑発に乗ってしまった。
「後片付けが終わったら言って、これから人間界に向かうから」
魔王の娘にそう言うと、影は返り血を洗い落とす為、シャワーを浴びに向かうのだった。
第51話 完




