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第49話[姉妹]

ペンダ達が魔物の兵に囲まれている中、黒騎士とサライヤが合流する。

予想外の出来事にサライヤがペンダに何があったのか尋ねるが、黒騎士の視線の先の人物に気が付き、サライヤは直様理解した。

魔王の娘。

彼女に流れる魔王の血に兵達は従ったのか。


「ムーちゃん……」


「フフフ、ねえクーちゃん」

「あなただけは特別に生かす様、影様に頼んであげるわ」

「だから一緒にこの世界を滅ぼしましょう」

「ねっ、私の大好きなお姉ちゃん」


黒騎士は赤ちゃんの頃から、魔王の娘の面倒を見てきた。


「お〜、よしよし泣かないで、お姉ちゃんですよ〜」


妹が出来て喜ぶ黒騎士。

だが、彼女は赤ん坊の頃から残虐だった。

魔物の兵を光線銃の様に魔力を放ち殺すと、まるでオモチャを与えられたかの様に喜んだ。

幹部も親の魔王ですらも、彼女の残虐性に引く中、黒騎士だけが、「こんな事をしちゃメッ」と叱るのだった。

彼女だけが、魔王の娘と向き合っていたのだ。

姉として彼女だけが……。


「今からでも遅く無い、ムーちゃん、私達と一緒に影と戦おう」


「何を言っているの?」

「第一、私の強さは知っているでしょ?」

「それとも、私のこの血が欲しいのかしら?」

「魔物の兵を自由に従えるこの血が……」


「そんなの必要ないさ」

「私は只、ムーちゃんと戦いたく無いだけ」

「死ぬのが怖いのなら、戦わなくたっていい」

「だからお願い……」


差し出される黒騎士の手、その手を魔王の娘は爪を鋭く尖らせて引っ掻いた。

私が望んでいる事は、この世界を地獄に変える事。

私が欲しいのは影様の愛だけだ。

そう叫ぶ魔王の娘を黒騎士は強く抱きしめた。


「この世界を地獄に変えたり何かはしない」

「そして、愛なら私がムーちゃんにあげるよ」

「私の愛じゃダメか?」


「当たり前でしょ」

「誰があんたの愛何か要るもんですか」


黒騎士を押し退けて、距離を取る魔王の娘。

彼女は近くに居た魔物の兵に命令し、黒騎士を捕らえる様に指示を出した。


「そうか、それがムーちゃんの答えなんだね」

「分かったよ」


黒騎士は大剣で魔物の兵を斬り裂いて行く。

中には元部下達も居て、黒騎士はかつての部下達に対しては手を抜き、気絶させていった。

だが多勢に無勢、幹部とは言えど大勢の魔物を相手していては体力の消耗も激しい。

そして遂にサライヤと雪花が取り押さえられてしまう。


「雪花」


ペンダがそう叫び、隙を見せる。

そこを魔物の兵に狙われるが、黒騎士がカバーし、ペンダを救う。


「よそ見をするな」

「雪花もサライヤも全滅何て望んじゃいないぞ」


「悪い」


「ペンダ、ガチュミ、私に力を貸してくれ」

「影の所まで道を作ってくれ」


黒騎士の言葉にペンダとガチュミが頷いて応える。

ペンダは斧で魔物達を切り裂いて行く。

ガチュミは魔物達に次々と憑依して近くの兵を殺して回った。

そして出来上がった影への道。

黒騎士は大剣を握りしめて、一直線に駆けていく。

そして黒騎士の一撃。

影の体は斜めに斬られ、そこから血が吹き出していく。


「やった」


正直、一撃を決められるとは思っていなかった。

傷を押さえ、苦しむ影を見て、黒騎士の心臓の鼓動が速くなる。

今がチャンス。

この好機を逃せば、こんなチャンス二度と来る事は無いだろう。

トドメを刺すんだ。

大剣を振り上げ、影の首を狙う中、影は声に出して笑った。


「なんちゃって」


勢いよく振り落とされた大剣を人差し指と中指で挟み、黒騎士の攻撃を止めると影はゆっくりと立ち上がった。


「ほら見て、私の傷口」


そう言うと影は水魔法を使い、血を洗い流していく。

綺麗な肌が露出し、傷口何て一つも無い。


「あなたがどれだけ私を斬ろうとも、私の体は簡単に傷を治してくれる」


そう言って影は黒騎士の大剣を人差し指と中指の力だけで折ると不気味な笑顔を向け、口を開いた。


「さあ、絶望のエンターテイメントは此処からよ」

「あなた達にはその出演者になってもらうわ」


第49話 完

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