第45[残虐姫]
私は幼い頃からお城のとある部屋に幽閉されていた。
理由は私が残虐だから。
たかがそんな理由で私はお父様と呼ぶには余りにも酷いクズとどうしようも無い理想を追い求める馬鹿な幹部達によって、私は自由を奪われたのだ。
たかが魔物の兵、一匹を拷問した位でだ。
毎日が退屈だった。
する事と言えば、部屋に置いてある本を読むのと、偶に来る黒騎士のクーちゃんと話しをするだけだった。
彼女は私の事をムーちゃんと呼ぶ。
魔王の娘だからムーちゃん。
実に笑える。
「ねえ、クーちゃん」
「私ね、妹が欲しいの」
「人間の赤ちゃん、手に入らない?」
「ちょっと分からない、ここ最近地上に降りてないから」
「だったら、兵士に頼んでよ」
「勿論、お父様には内緒でね」
「お父様は私の事が嫌いだから」
そう言って私は泣いた振りをする。
「泣かないで、分かった」
「お姉ちゃんに任せて、兵士に頼んでみるから」
それから数日後、黒騎士は私に赤ちゃんをプレゼントしてくれた。
食事用の扉から赤ちゃんを受けとり、頭を鷲掴みにして地面へ叩きつける。
私がそんな事をしていると気づかずに黒騎士は「まだ頭が据わって無いから、優しく抱くんだよ」などとアドバイスをして来た。
「ごめんクーちゃん、落としたら死んじゃった」
「えっ?」
「こんな弱い妹、要らないや」
「返すね」
そう言うと私は食事用の扉を開け、黒騎士に赤ちゃんを返した。
黒騎士の叫びを聞きながら、彼女が今、どんな顔をしているのか?
そんな想像をしながら、一週間は楽しめた。
「黒騎士を使い、赤ちゃんを手にしたか」
「お父様、そうクーちゃんが話したのですか?」
「あの子は何も話さんよ」
「只、私に謝っていた」
「全部、私がした事だと……、この食事用の扉を見れば誰がやったか分かると言うのに」
「酷いわ、お父様は私を疑っているんですか?」
「赤ちゃんを事前に殺して、この食事用の扉に放り込んだかも知れないのに……」
「何を馬鹿な事を、お前は姉として妹を庇う黒騎士を見て、何とも思わんのか?」
何を馬鹿な事?
馬鹿はお前だろうが、魔物として人間を殺すのは当たり前の事。
ましてや魔王の娘の私がやるのだから、何も間違った事はしていない。
「ええ、思いましたよ」
「馬鹿な奴ってね」
「貴様……」
そう怒鳴るクズに向けて、私は思いっきりドアを叩いた。
「文句があるなら、私を殺してよ」
「魔王の娘として産まれ、魔物として過ごす事も出来ず、自由を奪われ、責められて……、ねぇ、私はどうして産まれたの?」
黙る魔王。
もうそこには居ないのか、私の叫び声が只々虚しく廊下に響き渡るだけだった。
第45話 完




