表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/367

第41話[正体]

「可笑しいと思ったんだよ」

「氷の国でララちゃんがリップの話しをしていたけど、この世界にリップ何て無いよね」

「私達をずっと騙していたの?」


その問いに影は笑いながら答えた。


「どうやら作りが甘かったようね」

「でも安心して、ララはあなた達を騙したつもりはないから」


そう言うと影は語る。

ララは自分がこの世界に来て作った人格であると。

初めは勇者達の仲間になり、信頼関係を築き上げ、その上で勇者達を殺すつもりだった。

その為、水の国の人間の記憶を弄り、ララが水の国出身の騎士だと認識させた。

ララ自身もそう思い込み、これまで生きて来た。

自分の中に影が居るとも知らずに……。


「僧侶が来ても勇者が来ない」

「私はララの中で退屈な日々を過ごしていたわ」

「そんな時、王様から命令があったの」

「メルヘン王国に魚を届けてくれってね」


その言葉を聞いて緑の表情が変わる。


「まさか……、あれは……」


「そう、ララの体を乗っ取り私がやったの」

「黒騎士に罪を擦りつけたけど、よく考えれば分かる事よ」

「あの脳筋がそんな面倒臭い事をする筈無いってね」

「ああ、思い出しただけでも興奮するわ」

「あの時のお姫様の叫び、今でも鮮明に思い出される」


「貴様」


緑はそう叫び、影めがけ片腕だけで地べたを這いずりながら向かうが、影はそんな緑を足蹴にし、更に話しを続けた。


「メルヘン王国で集めた負の感情を魔王城に居る私の偽物に送り、そして薬を完成させた」

「それを人魚の国に持って行き、人魚達を狂わせる」

「それら全て、ララは何も知らない」

「彼女は間違いなくあなた達の仲間なのよ」


そう言うと影はララに姿を変えた。


「予想外だったのはララの人格を作った時に、元の姿とは別に新たな姿が出来た事」

「まあ、何方の姿でも私がその気になれば簡単に人格を入れ替える事が出来るから別に問題は無いんだけどね」

「さあララ、全てを知った気持ちはどう?」

「皆んなに今の気持ちを教えてあげて」


そう言うと影はララと人格を交代させた。


「本当に最悪な気分です」

「私が影の一部だった何て……」

「お願いです勇者さん、私を殺して下さい」

「知らないとはいえ、誰かを傷つけてしまう何て嫌なんです」

「だから……」


涙を流すララ。

それを見て、勇者はララを斬る覚悟を決めた。


「そう、それでいいの」

「本来なら私は今のあなた達が倒せる程、弱くは無いけれど、それでも私はあなたに殺されたいと思った」

「人魚を斬った時のあなたの顔、それを見て私はあなたになら殺されてもいいと思ってしまったの」


ララの姿でそう語る影。

今、自分を殺せば勇者の中で生きられる。

そう言って影は両手を広げ、勇者に斬られるのを待った。


「ララちゃん、ごめんね」

「救えなくて本当にごめん」


勇者は手を震わせながらもララに突っ込んで行く。

そしてララの首を斬り落とそうと剣を振り上げた時だった。


「ありがとうございます」


自分を更に追い詰める為に影が言った言葉なのか将又ララの本心なのかは分からない。

だがその言葉で勇者の決心は揺らいでしまった。

これまでララと共に旅をして来た記憶が走馬灯の様に蘇り、そして勇者は剣を寸での所で止めた。


「やっぱり出来ないよ」


涙を流す勇者を前にララの姿をした影が、まるでゴミ虫を見る様な目をして勇者にこう言って、勇者の腹部にナイフを突き刺した。


「このクズが」


第41話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ