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第39話[緑の覚悟]

日菜が倒れ、龍玉の力を纏った勇者もあっという間に倒されてしまった。

その場に居るスタリエとララがその状況に絶望している中、緑が皆んなの前に出た。


「何やってるのよ、あんたがアイツを倒せる訳無いじゃない」


「そうですよ」

「与えるダメージはゼロなんでしょう」


そう言って二人が緑を止める中、緑は振り返り二人に笑顔を向ける。


「これまで皆さんと旅をして来て、本当に楽しかったです」

「この世界でも仲の良い友達も出来ましたし、転生して来て本当に良かったと思っています」


「何を言って……」


嫌な予感がし、スタリエは言葉を詰まらせる。


「だからこそ、命をかけてこの世界を守りたいと思う」


緑はそう言うと刀を捨て、剣を握った。


「私は女神様ともう一つ約束をしているのです」


天界で対話一つで世界を平和にして見せると豪語した緑に女神様はある剣を渡していた。


「全ての母なる私に豪語した愛しき子供よ」

「もし、対話で解決するのが困難だと感じたら、その剣を使いなさい」

「その剣は最強である、あなたの力の全てを発揮させる事が出来るわ」

「但し、同時にあなたの体を蝕んでいく」

「その剣を使う時、その肉体は死ぬものだと思いなさい」

「私に豪語したのだから、それ位の覚悟を持ってお使いなさいな」


その事を皆んなに話し、緑は覚悟を決めた。

あの時の私は本当に甘かった。

そして女神様に感謝している。

私にこの剣をくれたのだから。


「だ……、だめぇー」


日菜の精一杯の叫びも緑には届かず、緑は剣を抜いた。

緑の手がどんどん変色していく。


「剣士風情が私に勝てるとでも?」


「勝てますとも、私は誰にも負けない」


目にも止まらない緑の一閃。

気付くと魔王の体は上半身と下半身が分かれていた。


「この世界で私は最強」

「誰にも私を倒す事は出来ません」


まだだ。

まだ斬らなくてば、前の世界で父様が言っていた。


「なっ、魔王が変身した」

「倒したと思ったのに……」


「甘いな緑、魔王は変身する生き物だ」

「倒したと思って油断していると痛い目みるぞ」


「流石父様、尊敬します」


そうだ。

魔王は変身する生き物。

ならば変身できない様に細かく刻むべき。

緑の斬撃に手も足も出ないまま、魔王が刻まれ肉塊になっていく。

やがて緑の右手と右足が腐り落ち、緑は体を地面に強く打ちつけた。

外へ流れる血。

それが血溜まりとなって、緑の頬まで流れていく。

血が抜け、体が冷える中、緑は死を覚悟した。

皆んなの為に戦えて良かったな。

この世界が平和になって良かった。

でも……。


「まだ……、み……と、た……」


まだ皆んなと旅がしたかった。

その最後の言葉も言えず、緑の意識は遠ざかっていった。


「絶対に緑ちゃんを死なせないから」


第39話 完

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