第32話[約束]
二階フロアにて、ガチュミと雪花、サライヤが日菜達が来るのを待っていた。
本来ならば、此処で魔王の為に戦わないといけないのだが、ペンダの話しを聞き、ペンダの考えが正しいと思ってしまった三人は、日菜達と戦う事を止め、通す事にした。
そして三人は自分達が戦わない事を日菜達に告げる。
「出来る事なら魔王様を殺さないで欲しい」
ガチュミのその言葉に勇者は何も答えなかった。
「勇者……」
分かっている。
そんな約束、簡単には出来ないよね。
だって魔王は数多くの罪の無い人達を殺してきたのだから……。
日菜はそう思い、勇者の代わりにその約束を断ろうとした時だった。
勇者がガチュミ達に言う。
「この剣に誓ったんだ」
「必ず魔王を斬ると……」
勇者のその言葉を聞いてガチュミ達の表情が暗くなる。
そんなガチュミ達に対し、勇者は続けてこう言った。
「もし、魔王がもう誰も殺さないと誓い、世界中の人達から許されたのなら、私はこの剣との誓いを無かった事にしてもいい」
「但し、そう簡単には許されないと思うけど……」
勇者はそう言い残し、三階のフロアに上がって行く。
そんな勇者の後を追う日菜達。
残された三人は昔を懐かしむかの様に二階フロアの天井を見つめ、そしてガチュミがボソリと呟いた。
「どうして妾はあんな事を言ったのじゃろう」
出来る事なら魔王様を殺さないで欲しい。
ペンダの話しを信じたからこそ、日菜達を通したと言うのに……。
ガチュミは一人、ああ言ってしまった事を後悔していた。
第32話 完




