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第26話[鬼神]

皆んなのお陰で拾って来た子はすくすくと成長していった。

ただ、問題があるとすれば……。


「痛い痛い、黒ちゃん止めて」


「フフン、私は強いのだ」


少しわんぱくに育ち過ぎた所かな。


「コラ黒、雪花が痛がっているだろう」

「止めなさい」


「あっ、お父さん」


わんぱくな子だが私には甘えん坊だ。

まあ、そこが可愛い所なんだが……。

そんなある日の事、ガチュミから鬼神の話しを聞かされる。

滅んだ村でたった一人、お宝を守る魔物。

彼女は一体何故、お宝を守っているのだろうか?

人間のお宝を守って彼女に何の得がある?


「彼女もガチュミみたいにお宝を餌に金品を奪っているのか?」


「いや、特にその様な噂は聞いてません」


ふむ、だとしたら何故?

いや、分からない事をいつまでも考えていたって仕方がない。

本人の口から聞けば良いだけの事だ。

先ずはその鬼神とやらを仲間に加えよう。

王国の騎士を物ともしないその強さ。

きっと我が野望に役立つかも知れない。


「それにしても魔王様、すっかりと魔王らしくなられたではないか」

「僕がいつの間にか私に変わっておる」


ガチュミの指摘に私の顔が赤くなる。


「わー、お父さんの顔が赤い」

「フフフ、面白い」


私は恥ずかしさからか、その場を去り自室へと戻った。

そして数日後、私は鬼神に会いに行く準備をした。

ガチュミが部下を引き連れた方が良いのではと言うが、私はそれを断る。

別に彼女を倒しに行く訳じゃ無い。

此処は私一人で行って彼女を説得するべきだ。

そう思い、出かけようと部屋を出た時だった。

黒が現れた。


「私も行くー」


笑顔でそう言って来る黒に私は危ないから留守番をする様に言った。

すると彼女は床に転がり駄々を捏ね始めた。

こうなると私は弱い。

仕方がないので黒を一緒に連れて行く事にした。

黒い鎧を着せ、二人で手を繋ぎ魔王城から出て下界に降り立つ。

そして鬼神の住む村を目指し旅を続けていたある日の事、黒が私に夢を語ってくれた。

将来、私を守る騎士になりたい。

そう言ってくれる黒を抱きしめて、私はお礼を言う。


「黒が騎士になれば名前は黒騎士だな」


「黒騎士……、うん私、今日から黒騎士になる」


おいおい、騎士は将来の夢じゃ無かったのか?

全く黒は面白い子だな。


「お父さん、今日から私の事は黒騎士って呼んでね」


分かったよ可愛い黒騎士ちゃん。


「キャッ、蛇」


いきなり現れた蛇に驚き、可愛い黒騎士ちゃんは私に抱きついてきた。

全く、私を守るのなら先ずは蛇に勝たないとだな。

そんな微笑ましい日々を過ごして私達は鬼神の住む村にたどり着いた。

鬼の様な目をしているのだろうと思っていた鬼神の目は何処か虚ろで覇気がない。

この目、彼女は宝を守っているのでは無く、自分を殺してくれる者を待っているのでは?

まあ、何はともあれ彼女を勧誘しないと……。

そう思い、彼女と話し合ってみるが何を勘違いしたのか彼女は私に襲いかかって来た。

特に彼女と戦いたかった訳では無い。

彼女の攻撃を交わしつつ話し合いをする事も出来た。

だが、彼女が私の可愛い愛娘を泣かした事に私は腹を立て、気付いたら彼女を気絶させ、黒騎士の元へ走っていた。

私は黒騎士をおぶり、片手で鬼神を抱える。


「さて魔王城に帰るか」


泣き疲れて眠る黒騎士を早くベッドで寝かせてあげたい思いと道中鬼神が目覚め面倒臭い事にならないかという不安で私はガチュミにコンタクトを取り、迎えに来てもらう事にする。

そして鬼神の面倒を雪花が見たいと言うので、私は彼女に鬼神の事を全て任せる事にした。

そして数日後、鬼神から過去の話しを聞き、私は彼女に我が野望について全てを話した。


「人と魔物が共存する世界ねぇ」


雪花の方をチラッと見て、何故だか顔を赤くする鬼神。

そして彼女は私達の仲間になる事を決意してくれた。

これで私の夢に一歩また近づいた。

必ず実現して見せる。

人と魔物が共存する世界。

あの時の幸せだった村の様に世界を変えて見せる。

私と私に従う者達の力で必ず……。


第26話 完

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