第24話[ガチュミと雪花]
僕一人が残された。
楽しかった思い出があればある程、辛さが増していく。
そんな僕の前に巨大な魔物が現れた。
僕を食べる気なのだろうか?
巨大な口を開け、彼は僕を丸呑みにした。
これで僕は皆んなの所へ行ける。
またあの世で皆んなと……。
不意に別の感情が湧き上がって来る。
まだ死ねない。
死んじゃ駄目なんだ。
そう思えば思うほど生きようと抗い、僕は巨大な魔物を殺していた。
「どうして辛くて悲しい筈なのに、何故生きようとする?」
僕の中で幸せだった記憶、人と魔物が共存して生きていく世界。
ああ、そうか。
僕は魔王としてこの世界を支配しないといけないのか。
この世界を支配して、魔物と人が共存して生きていける世界を作ろう。
魔物達と人々が笑顔で生きていける世界を……。
この日から僕は理想の世界を作る為、魔王として生きる事にした。
死んだ筈の僕の心に希望の光が差して来るのが分かる。
仲間を集める為、僕は世界を旅する事にした。
最初に出会ったのはガチュミ。
彼女は洞窟内の宝を餌に人間を誘き寄せ、金品や食料を奪う盗賊じみた事をしていた魔物だった。
僕の体を乗っ取り、金目の物や食料を奪おうとする彼女だったが、只の魔物である彼女が魔王である僕の体を操る何て出来やしない。
僕に取り憑いて数秒で耐えきれなくなり、僕の体から出て行ってしまった。
「大丈夫?」
僕は彼女の体が心配になり、そう声をかけた。
しばらく話しをし、彼女は僕の仲間に加わる事を承諾してくれた。
何でも貯めたお金を使いたいみたいだ。
人から奪ったお金なのに可笑しくて少し笑ってしまった。
次に出会ったのが雪花だ。
彼女は幼い頃、親に捨てられ魔物に襲われていた。
そこに僕が現れ彼女をその魔物から救ってあげた。
まだ幼い彼女を見て、僕は人間の子供達の事を思い出していた。
あの時は何も出来なかった。
でも今は……。
彼女を保護し、ガチュミと相談しながら雪花を育てていく事に決めた。
そして彼女と過ごしいく内に、何故彼女が捨てられていたのか理解する事になる。
それは魔王城に昆虫型の魔物が出て来た時に事件は起きた。
雪花は悲鳴をあげ、辺り一面全てを凍らせて見せたのだ。
昆虫型の魔物もガチュミも一瞬で凍ってしまう。
だからか、毎回虫が出る度にこれじゃ大変だろう。
もしかしたら彼女は両親を凍らせて殺しているかもしれない。
だとしたら彼女を捨てたのは彼女の両親の親族か?
色んな事を考えるも、僕はそれを彼女に聞かなかった。
余計な事を聞いて彼女を傷つけたく無かったからだ。
「取り敢えずガチュミの氷を溶かさないと」
こうして僕は二人の仲間を得た。
第24話 完




