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第23話[伝説の剣]

翌日、ドラゴン族のお姫様を残し、勇者達はヒヤリマの手によって伝説の剣が眠る洞窟に飛ばされていた。


「それじゃあ、行こうか」


勇者はそう言って皆んなの先頭を歩く。

一体この先にどんな試練が待っているのだろうか?

そんな不安感を抱きながら、勇者達は洞窟の奥にたどり着く。


「誰?」


日菜はそう呟くと杖を構えた。

禍々しいオーラを放ちながら立ち尽くす魔物の子供。

彼の瞳から涙が溢れ落ちている。


「どうして殺すの?」

「魔王だから生きてちゃ駄目なの?」


子供のその言葉と共に洞窟内の景色が変わっていく。


薄暗いお城に小さな魔物の子供が立っていた。

魔王として産まれたその子供は城の中を探索し、本を読み漁っていた。

一通り本を読み終えると魔王はボソリと呟いた。


「嫌だな」


誰かを殺す何てしたくない。

人を殺す位なら自分が殺される方がマシだ。

そう思い、彼は魔王城から出て地上に降りて行った。

誰かが僕を殺すまで僕はこの地上で自由に生きよう。

そう思い、彼は地上を旅したのだ。

人目は出来るだけ避け、地上の魔物達と交流し木の実を食べて生活をしていたある日の事。

彼は魔物と人が共存する村を発見した。

そして彼はその村に住む事にした。

人と魔物、力を合わせ日々を楽しく生きていく。

魔物にしか出来ない事、人にしか出来ない事、お互いの長所を活かし、毎日楽しく過ごしていた。

何年何十年と長い年月を過ごしてきたある日の事。

村に王国騎士や兵士達が現れる。


「此処が魔物と暮らす村か」

「愚かな、魔物と暮らすなどと……」

「お前達、一人、そして一匹残らず斬り伏せろ」


騎士団の団長はそう言うと剣を抜き兵士達に合図を送る。

すると騎士団員や兵士達は迷わず村人や魔物達を斬り殺して行った。

人や魔物達が目の前で斬られて死んでいく中、魔王は思う。

どうして?

どうして殺すの?

僕達が何か悪い事をしたの?

それとも僕が魔王だから?

魔王だから生きていちゃ駄目なの?

大人達が子供を抱え逃げて行く。

魔物だろうと人だろうと関係ない。

子供だから助ける。

そう言って大人の男の人は僕と二人の子供、更には赤ちゃんを体に巻き付けて走って逃げてくれた。

ウマが使えない様に森の中に入り、がむしゃらに走る。

やがて彼は森に仕掛けられたトラバサミにかかり負傷した。


「行け、行くんだ」


大人にそう言われ、僕達は赤ちゃんを抱いて走った。

どれだけ走っただろうか僕達は洞窟にたどり着き、此処に住む事にした。


「キュキュ」


「ねえ、この子動かないよ」


魔物の子供と人間の子供が僕に話しかけてくる。

大丈夫、ただ眠っているだけさ。

そう言って二人を安心させるが、僕は赤ちゃんがもう死んでいる事に気づいていた。

そして次に人間の子供が死んでいく。

長い年月を生きて来たとはいえ、僕はずっと子供として過ごして来た。

だから、大人としてどうやって生活をすれば良いのか、そして怪我に効く薬草は何か、それら全て知らなかった。

だから、この子を助ける事が出来なかったのだ。

僕を慰めるかの様に魔物の子供が話しかけて来る。


「キュッキュ」


ごめん、僕には何も出来ないんだ。

やがて魔物の子供も死に、僕の心は完全に死んだ。

この時の僕はそう思っていた。


第23話 完

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