第21話[王の最後]
私は最低の父親だ。
妻と娘を避難させてやる事もできない。
全ては光の巫女の為……。
地下にいる兵士から無事に光の巫女が避難した事を聞かされる。
「そうか……、うむ、下がって良いぞ」
私は城下町からこの国が滅んでいくのを眺める。
産まれてから今まで、この国で育って来た。
大好きな街の景色、愛してやまない国民達。
それらが魔物達に壊されていく。
その辛い事……。
胸が締め付けられ、涙が止まらない。
こんな思いを他の国の王達にさせてはならない。
だからこそ、我が家族の命に変えても光の巫女を守らなければならないのだ。
「陛下、奥方と姫君の避難をさせます」
「ならぬ、魔物達に光の巫女の存在がバレてしまう」
「いえ、地下には避難しません」
「地上から逃げるのです」
「勿論、助けられる国民は助けるつもりです」
力強い兵士の目。
ああ、私は兵士にも恵まれているのか。
「後で他の兵士や騎士も此方に向かわせます」
「ですから陛下もお逃げになって下さい」
「いや、私は此処に残るよ」
「私より国民達の避難を頼む」
「しかし……」
「頼むよ」
「分かりました」
「どうかご無事で……」
この後、王様は黒騎士と対峙し、そして……。
第21話 完




