第17話[馬鹿者]
勇者は緑に剣の稽古をつけて貰っていた。
流石は緑、どんなに頑張っても勇者の攻撃を簡単に交わしていく。
息を切らし勇者は汗を拭う。
だが、タオルは勇者の汗で既に濡れている為、しっかりと汗を拭えた感じがしなかった。
「あはは、ちょっとタオルを変えてくるね」
木陰に置いたリュックまで走り、新しいタオルを変えて、勇者はその場で汗を拭う。
「勇者殿……」
そう呟き、心配そうに勇者を見つめる緑。
そんな中、緑は父との剣の稽古を思い出していた。
「ハァハァ、まだまだ」
「ふむ、八時二十分か」
「よし、朝の稽古はここまでだ」
「でもまだ、十分も稽古してませんが……」
「コレじゃ、オークが来た時に皆んなの為に戦えません」
「馬鹿者、時には体を休めるのも重要だ」
「体に休息という、ご褒美を与えるのだ」
「緑もテストでいい点をとった時に貰えるお母さんの手作りケーキは嬉しいだろう?」
「はい、母様の作るケーキは美味しいです」
「それと一緒だ」
「成る程、休息を取れば私の体も嬉しいんですね」
「そうだ、分かったら一緒に朝のアニメを見よう」
「はい、父様と一緒に見るアニメ大好きです」
そうです。
ご褒美です。
緑はそう思い、帰って来た勇者に休息を取るように提案する。
「いや、いいよ」
「早く強くなりたいし」
「馬鹿者です」
「へっ、馬鹿?」
「急にどうしちゃったの?」
「時には体を休めるのも大切です」
「体にも休息という、ご褒美を与えるのです」
「勇者殿も日菜殿に足を舐めろと命令されたら嬉しいでしょ?」
「本当にどうしちゃったの?」
「それと一緒です」
「意味わかんないよ」
「えっと、とりあえず緑ちゃん、疲れたなら先に帰ってていいよ」
どうしてだか、私だけ宿屋に帰されてしまった。
何故でしょう……。
第17話 完




