表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/367

第14話[最悪の少女]

小さな女の子相手に大人達は武器を持ち、容赦なく攻撃していく。

だが、女の子はそれらの攻撃を避けては大人達が装備している鎧を砕き腹を抉り、小さな手を赤く染めて不気味に笑っていた。

そして、その子の隣には仮面を被った人物が立っている。


「フフフ、やっと来た」


影だ。

ペンダが言っていた通り、彼女は生きていた。

今回も誰かの肉体を借りているのだろうか?

そんな私の考えを知ってか知らずか、彼女は自分が幻影だという事を打ち明けた。

そして、隣に居る女の子は実験により強化された事も語る。


「さて勇者、あなたにこの子が殺せるかしら?」

「憎しみに支配され、ただ人を殺すだけの彼女をあなたは殺せるの?」


影の甲高い笑い声が辺りに響く中、勇者は剣を抜き一歩前に出た。

私達はそんな勇者を止める。

何も戦わなくたって彼女を元に戻す方法がある筈だ。

そう勇者に話すが……。


「本当にそんな方法があるの?」


悲しそうな彼女の顔を見て、私達は何も言えなかった。


「無論ある」


ふと背後から声がして振り返ると、そこには見知らぬお爺さんが立っていた。


「フッ、ジジイが何の用?」

「まさか、早死にする為に此処へ来たとか?」


「吐かせ、ワシを誰だと思っておる」


影に向かって話すお爺さんに緑ちゃんが背後から答える。


「闘技場の魔王ですよね?」


「フッ、今はな」

「じゃが昔は勇者の懐刀と呼ばれておった」


えっ、て事は、この人は……。


「なっ、昔の勇者の仲間」


声からするに影は焦っているのだろう。

これは頼もしい味方だ。

そう思っていたのだが……。


「現勇者よ、人の救い方を教えてやる」

「いいか、愛だ」

「愛を持って接するのじゃ」

「さすれば悪の心は完全に消し去る事ができる」


そう熱く語っていたお爺さんだが、軽く少女に捻られ返り討ちにあってしまう。


「くそう、後三百年若ければ……」


あっ、この人駄目だと悟った私達は武器を手にした。


「兎に角、勇者だけに戦わせる訳にはいかないから」


そう言って私達は戦闘態勢に入る。

そんな時だった。

今度は老師が現れた。


「めしゃぁ、まだかの?」


「老師、危ないので下がっていて下さい」


そう言って避難させようとした時、闘技場の魔王が立ち上がり、老師の両肩を掴んだ。


「賢者のジジイ、元気じゃったか」


「おお、トメさんか?」


「トメじゃ無い、ホラっ、勇者の懐刀の……、アレ?」

「ワシの名前は何じゃったかの?」


「ちょっと日菜、このボケ老人を早く退かせて」


そう言って私に叫ぶスタリエちゃんの鞭を見て、老師の顔色が変わった。


「女王様、卑しい私めにご褒美をお与え下さいませ」


そう言って老師はスタリエちゃんに尻を向けた。

そこはご褒美じゃ無くて罰などでは?

などとツッコミそうになるのを堪え、私はある事を思い出していた。

スタリエちゃんの持つ鞭の持ち主って、賢者を下僕にしてたって言っていたような……。


「ちょっと日菜、どうすれば良いのよ」


「えっと、怪我をしない様に叩いてあげたら……」


「何を言う、叫びたくなる程の勢いでよろしくお願いします」


老師はそう叫ぶとスタリエちゃんに思いっきり鞭で叩いて貰った。

何かもう、この人を老師と言って崇めるの止めようかな。


第14話 完



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ