第26話[打倒魔王への旅]
この日、本日分のノルマを達成し、クエストの報酬を貰いに私達は酒場へ来ていた。
資金も大分集まった。
周辺のモンスターも楽に狩れる様になった。
長かった。
これでようやく魔王討伐の旅に行ける。
私は、お世話になった姫様に挨拶をしに、お城へ向かった。
「嫌ぁ、行かないでくださいませ」
「魔王討伐なら勇者様に任せて、魔法使い様は是非ここに残って、ゆっくりしてくださいませ」
泣きつく姫様をなだめ、私は別れを告げて国を出て行く事を決意する。
途中、城下町の入り口で立ち止まり、私は後を振り返った。
色んな事があった。
野宿に物乞い。
毒殺されかけたり、牢屋まで入り、終いには汗で作ったポテチまで食わされた。
あれ、全然良い思い出が無い。
何だか涙が出てきた。
「日菜ちゃん、泣いてるの?」
勇者が近づき、眼鏡を取り、指で涙を拭ってくれる。
そして、その指を口に入れた。
「えへへ、日菜ちゃんの涙、美味しいね」
普通に引いた。
はぁ、これから先、きっと色んな不幸が訪れるんだろうな。
ああ、先が思いやられる。
私は絶望感を抱きながら、始まりの国を背に、歩き始めた。
日菜達が旅立って数日後。
始まりの国では、凄腕の暗殺者を雇うべく、面接を行なっていた。
「あの、勇者さえ居なければ、魔法使い様は私の物に……」
続々と現れる暗殺者達。
姫様は打倒勇者を掲げ、暗殺者を選別していった。
第26話 完
第1部 完




