第11話[龍玉]
魔王城に帰還した黒騎士の兵達に奪って来たお宝を魔王城の宝物庫に仕舞う様に指示を出す。
「それで黒騎士は何処に?」
「ハッ、影様」
「黒騎士様ならお城で勇者を待つとの事」
そう勇者を……。
あの子も必死で修行して強くなった。
今の勇者があの子に勝てるか見ものだわ。
ああ、でもまだ実験が残っているし、龍玉を使った実験もしてみたい。
正直言うなら、黒騎士には勇者に負けて欲しいと思っている。
勇者にはやって貰いたい事が山ほどあるからね。
それに、勇者に負けて帰って来るあの子の顔も見てみたいわ。
どんな絶望的な表情をするのか興味がある。
私はそんな事を考えながら、奪って来たお宝を見て回る。
「ねえ、お宝はコレで全部?」
「はい、コレで全部です」
可笑しい、魔王城の書物では龍の国に龍玉があると書かれていたが……。
あれは過ちか?
それともフィクションか?
私は黒騎士の兵に詳しい事情を聞く事にする。
「成る程、一匹逃してしまったのね」
逃げたお姫様が勇者を連れて戻って来る。
そう思って黒騎士はお城に残ったのね。
正直、あの子の事だから何も考えずに残ったのばかり思っていたけど……。
まあ、いいわ。
龍玉が勇者の手元にあるのなら、それはそれで良い事だわ。
仕方ない、龍玉を使った実験は諦める事にするか。
私は自室に戻り、やりかけていた実験を続けた。
「コレが完成したら、勇者はどんな顔をするのかしらね」
「楽しみだわ」
第11話 完




