第10話[アトラクション]
私はスタリエちゃんに叩き起こされていた。
「あっ、ごめんなさい」
「昼寝のつもりが、がっつりと寝てた気がする」
「今から出発だよね?」
「直ぐ出発の準備をするから」
「日菜までそんな事を言うの?」
えっ、違うの?
「聞いてよ日菜ちゃん、スタリエちゃんったら、まだ出発したくないって我儘言うんだよ」
「当たり前でしょ馬鹿」
「私は今まで、あの坂を頑張って登ってきたのよ」
「ソレなのに、この馬鹿勇者は「よし、スタリエちゃん達も来た事だし、出発するか」って言ったのよ」
「休ませる気ゼロ、何の拷問よ」
「ドラゴンのお姫様も迎えに来てくれないし……」
「すみません、忘れてました」
「わわわわ忘れていたですってぇ〜」
城内にスタリエちゃんの声が響く。
何だろう、結構元気あるじゃんと一瞬だけ思ってしまった。
私と同じ事を思ってしまったのか、緑ちゃんがその事についてスタリエちゃんに話した。
「スタリエ殿、めちゃくちゃ元気あるじゃないですか」
「あるか馬鹿」
「はぁ、日菜は私達の事、忘れて無かったよね?」
「勿論だよ」
「日菜?」
「どうして目を逸らすの?」
不味い、私も二人の事、普通に忘れていた。
取り敢えず、話題を逸らして勇者に休む事を提案する。
「うーん、でもなぁ、早く強くならないといけないしなぁ」
「だったら、洞窟の坂道を往復して来なさいよ」
「スタミナがつくわよ」
「いや、今はスタミナとか要らないから別にいいよ」
「ムカつく」
そう言ってスタリエちゃんは勇者を何度も叩いた。
流石に今すぐ出発するのは二人が可哀想なので、お城で少し休む事にした。
そして帰りはお姫様が一人一人、崖から抱えて降りてくれる事となった。
ただ……。
「アハハ、お陰で高所恐怖症になったわ」
遊園地の絶叫系以上の迫力にスタリエちゃんがまた可笑しくなってしまったのは言うまでも無かった。
第10話 完




