第9話[明るい食卓、暗い昼寝]
どれだけの時間が経ったのだろうか。
未だにスタリエちゃん達は来ない。
玉座周辺の硬い床に長時間座っていたせいか、お尻が痛くなってきたので、私達は崩壊したお城を探索しながら休める場所を探していた。
「あっ、此処はまだ綺麗だよ」
しかもベッドが一杯ある。
私達は早速横になり、大きな欠伸をした。
高所にあるせいか、少し肌寒い。
だけど掛け布団をかけて寝ると丁度いい温かさになって、何だか眠くなってきた。
「皆さん、食べ物は無事みたいです」
「どうぞ、召し上がって下さい」
そう言って、テーブルに色んな食べ物が置かれていく。
奇妙な形をした野菜や、水風船の如く果汁で膨らんだフルーツ、そして霜の入ったお肉……。
「このお肉、魔物のお肉じゃないよね?」
「はい、大丈夫です」
「生で食べるのがオススメですよ」
そう言ってお姫様は美味しそうに生肉を食べていく。
「ねえ、勇者……、お姫様はドラゴンだから平気かもだけど、私達は生で食べるのは止めた方がいいんじゃないかな?」
「いや、平気でしょ」
「ですね」
そう言って二人は生肉を頬張っていく。
二人が余りにも美味しそうに食べるので、私も味が気になり、思い切ってお肉を食べてみる事に……。
「なっ、何コレ、すっごく美味しい」
こんな美味しいお肉を食べたのは初めてだよ。
まるで大トロのお刺身を食べているかの様だ。
「まるで飲む肉汁だね」
「フフフ、日菜ちゃん何ソレ?」
「食レポ向いて無いんじゃない?」
「だったら勇者は何て言うのさ」
「そうだね〜、口の中で広がる甘みのオアシスとかどうかな?」
「え〜、勇者の方こそ何ソレだよ」
皆んなで楽しくお喋りをしながら、私達はご飯を食べ進めていく。
そして、お腹一杯になった所で私達はベッドに横になって、お昼寝をする事にした。
そして、三十分辺りが経過した頃だろうか、勇者のベッドから、誰かの啜り泣く声が聞こえてくる。
「お父様……」
お姫様……。
あんなに明るくしていたのに……。
いや、無理をさせていたんだね、きっと……。
そして多分、勇者にも無理をさせている。
今回、私は何の役にも立てなかった。
「もっと、強くならないとだな」
私はそう呟いて、眠りについた。
第9話 完




