表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/367

第8話[良かった]

お姫様から勇者が危ないと聞いて、私は走っていた。

螺旋状の坂道を走って登るがまだ先は見えない。

肺が痛い。

足も辛い。

それでも私は休む事無く、走り続けていた。


(もし、死んだりしたら絶対に許さないから)


そう思っていると、急激な悪寒に襲われ私は立ち止まってしまった。

息を切らしながら両膝を地面に着けて、私は体を震わせた。

何よコレ。

上で一体何が起きているのよ。

強力な魔力の気配が消えて、私は額に冷や汗を滲ませながら立ち上がった。

嫌な予感がする。

魔力の気配が消えたって事は、もう戦わなくていいって事だよね?

それってつまり……。

流石にあれ程の魔力の持ち主相手に勇者が勝てるとは思えない。

だとしたら、勇者はもう……。

今まで勇者に色々な事をされた。

ムカつく事も多かったし、セクハラされた事も多かった。

だけど、一緒に旅をして来て楽しかった事もあったし、皆んなで笑いあった事もあった。

勇者は私の……、私達の大切な仲間だ。

その勇者がもう……。


「魔法使い様、泣いているのですか?」


後から追いかけて来たお姫様がそう尋ねて来る。


「だって勇者が……」


「大丈夫です」

「勇者様は私と約束してくれました」

「絶対に死なないと、ですから魔法使い様、落ち込まないで下さい」


そう言うとお姫様は私を抱え、頂上目指して空を飛んで行く。

あっという間に頂上へ着き、私とお姫様はそのままお城を目指した。

そして私は絶句する。

玉座の前で勇者と緑ちゃんが倒れているからだ。


「間に合わなかった……」


「いや日菜ちゃん、勝手に殺さないでよ」


そう言って起き上がる勇者。

そんな勇者をお姫様が抱きしめた。


「勇者様、無事だと信じてました」


鼻の下を伸ばす勇者を見て、私は安堵していた。

良かった、本当に良かった

疲れがドッと押し寄せ、私はその場に座り込み体を休ませる。


「ところで緑ちゃん、どうやって此処に?」


「えっと、崖を登りまして……」


あっ、やっぱり登ってたんだ。

全く、無茶して。


「それより日菜ちゃん、緑ちゃん凄かったんだよ」


そう言って勇者は緑ちゃんの事や魔王が現れた事、そしてもっと強くならなければいけない事を私に話してくれた。


一方スタリエ達は……。


「あのドラゴンのお姫様、私達を置いて自分だけ飛んで行っちゃう何て……」


「まあまあ、もう少しですよ」


「もう少しって、全然先が見えないじゃない」


今も尚、必死に坂を登っていた。


第8話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ