第25話[ポテチ]
ポテチが食べたい。
蒸しただけのジャガイモを口に運びながら、私はそう思う。
始まりの国が特別なのか、この国には調味料が無い。
良く言えば、素材の味を感じられると言えるが、調味料あっての料理だ。
素材を生かし、ワンランクレベルを上げる。
それが調味料だ。
私は我慢できずにポテチが食べたいと叫ぶ。
駄々をこねる子供の様に……。
「分かった、私に任せて日菜ちゃん」
自信満々に胸を叩く勇者を見て、頼もしく思えてくる。
ただ、材料を集めるのに時間がかかるらしく、私はポテチが出来るまで一か月待った。
材料が揃い、私は姫様を誘い、ポテチの試食会を開く。
勇者はジャガイモを薄くスライスし、植物の種から採取して得た油を温め、揚げていく。
ジャガイモが揚がる音を楽しみながら、揚がったジャガイモを試食してみる。
サクッと音を鳴らし、油の旨味を堪能しつつ、ポテチができるのを私達は待った。
ポテチに欠かせない材料、塩。
私は塩を指につけて舐めてみる。
うん、美味しい。
この塩を揚げたてのジャガイモに塗してポテトチップスの完成かぁ。
出来上がったポテチを食べ、私は歓喜した。
姫様もポテチが気にいったのかよく食べている。
幸せを感じながら私は勇者に尋ねた。
「この塩、どうやって手に入れたの?」
これから先の事も考え、塩は仕入れておきたい。
何せ、万能調味料なのだから。
「私の汗だよ」
それを聞いた私と姫様の手が止まる。
「一か月間、汗を貯めて作ったの」
「どう、美味しい?」
両手を頬に当て、うっとりとした表情を浮かべる勇者を無視して、私と姫様は指を喉の奥に突っ込み、刺激を与え、胃の中の物、全てを吐き出した。
コイツ、何て物を食べさせるんだ。
「二人共大丈夫?」
「急にどうしちゃったの?」
「私、心配だよ」
そう言って心配そうにする勇者を姫様は睨みながらハンカチで口を拭く。
「この、変態勇者」
力一杯、姫様にビンタをされ喜ぶ勇者を背に、私達は口直しの為に姫様の部屋へ向かった。
第25話 完




