第8部第1話[街炎上]
周囲が炎に包まれているせいで気温が上がり、私達の額から汗が滲み出る。
そんな中、私達は魔物の群れと戦っていた。
「スタリエちゃんと緑ちゃんは生存者の救出をお願い」
そう言って私は魔法を唱え、魔物達を一掃していく。
弱い魔物達で本当に良かった。
コレなら早く片付きそうだ。
「何をやっているお前達、早くこの街を滅ぼして黒騎士様の元へ戻るぞ」
そう言って奥から体長二メートル半位の二本の角を生やした魔物が現れた。
「んっ、そうか勇者達が相手だったか」
「ならばその首、魔王様への手土産にしてくれる」
そう言って斧を手に持つ魔物の背後に回り、勇者は魔物の踵を切り裂いた。
膝をつき、頭が低くなった隙をついて首筋を斬る。
魔物の血が勢いよく噴き出す中、勇者は魔物に黒騎士の居場所を問うた。
「誰が貴様何ぞに言うか」
意地を見せる魔物の頭を勇者は剣で斬り落とす。
それなりの地位がある魔物なんだろうか、勇者がその魔物を倒した事により、魔物達は次々と逃げて行った。
「早く生存者を助けないと」
街を包んでいた炎を鎮火しつつ、私達は生存者を捜して周った。
そして助けられたのは百にも満たない数の人達。
助かった事に喜ぶ人もいれば、大切な人を失い悲しむ人もいる。
勇者はそんな人達の所に周り、頭を下げて謝った。
助けが遅くなって申し訳ないと謝ったのだ。
行き場の無い怒りで勇者にビンタする人もいれば、泣き崩れ死にたいと叫ぶ人までいた。
そんな人達を前にして、勇者はただ悲しい表情を浮かべているのだった。
第1話 完




