第46話[幸運の薬]
私達はサーベリックちゃんに呼ばれ、サーベリックちゃんの家に来ていた。
何でも薬が出来たらしい。
遂にこの不幸体質ともおさらばか……。
そう思っていたのだが。
「すまぬ、三錠しか作れなんだ」
えっ、三錠って何?
私は錠剤を見つめ呟いた。
何でも私の強力すぎるこの体質を完全に消し去る事ができないらしく、急遽、一錠辺り一日間、幸運な事が起きる薬を開発したらしい。
「試しに飲んでみなさいよ」
「もしかしたら、勇者が別の世界に転生するかも知れないわよ」
「アハハ、スタリエちゃん、それどういう意味?」
「言葉通りの意味だけど?」
そう言って笑い合う二人。
だが、目は笑っていなかった。
まあ、二人は放っておいて薬の効果でも試してみようかな。
そう思い、私は一粒の錠剤を口に含み水を飲んだ。
特に体に何の変化は無い。
「試しに財布を持って買い物をしてくるといい」
私はサーベリックちゃんに言われた通り、お財布を持ち買い物へ出かけた。
可愛らしい洋服屋に立ち寄り、普段着ない様な可愛いお洋服を買う。
「こちらで着替えていきますか?」
「はい」
そう言って私は購入したお洋服を着て、会計を済ませた。
「本日、お城から豪華景品付きのクジ引き会を開催しておりまして、一回如何ですか?」
まさか、特賞が当たったりして。
そんな期待を胸に抱きながら私はクジを引いた。
すると……。
「おめでとうございます」
「四等の季節のフルーツ盛り合わせが当たりました」
何だろう、四等かと思ってしまった。
でも、お洋服を買ったオマケに季節のフルーツが付いてきたと考えれば凄くお得何だろうけど……。
やっぱり四等か。
普段なら大喜びするけど、今は幸運状態だしなぁ。
私はそんな事を思いながらフルーツを受け取った。
「ちょっと、あの日菜が四等を当てたわよ」
「錬金術って本当にすごい」
スタリエちゃんと勇者が背後で何やら話している中、私は明るい太陽に照らされながら背筋を伸ばした。
すると今度はイケメンな男の人に声をかけられた。
「お美しいお嬢さん、僕と一緒にお食事でも如何かな」
な、ななな、ナンパされてる?
えっ、私?
後ろに居る雪花ちゃんじゃなくて?
いや、待てよ。
私にナンパしているみたいに見えて本当は後ろに居る雪花ちゃんにナンパしてるんじゃ……。
「すみません、私には心に決めた人が居るので」
ホラやっぱり、雪花ちゃんがそう言って断ってるから私じゃないんだ。
危なかった。
危うく恥をかくところだったよ。
「いや、あなたじゃないです」
「私が声をかけたのは目の前に居る眼鏡をかけた美しい美少女に声をかけたのです」
そう言って私にご飯を誘ってくるイケメンは一瞬で氷漬けになった。
恐る恐る後ろを振り返ってみると……。
「さあ行きましょう日菜ちゃん」
恥ずかしいのか顔を赤くし、体温が上昇しているのか、雪花ちゃんの額から汗の様な物が大量に流れていた。
ちょっと溶けてない?
「ってそれより雪花ちゃん、あの人を元に戻さないと」
「さあ、行きましょう」
私は雪花ちゃんに強引に腕を引っ張られ、先へ連れて行かれるのだった。
第46話 完




