第43話[モテ]
ブランガガル国についた私達は薬が出来るまで城下町を歩き楽しんでいた。
それにしても、雪花ちゃんと一緒に歩くとやたら男の人達に声をかけられる。
「あの、一目惚れしました」
「お付き合いして下さい」
「ひっ」
小さな悲鳴をあげて雪花ちゃんは男の人を凍らせる。
コレで何人目だろうか。
告白を受ける度に驚いて凍らせるなんて、いい加減に慣れて貰いたい。
私は凍った男性を軽い炎系の魔法で溶かし、スタリエちゃんに回復魔法をかけて貰い助けていく。
「はぁはぁ、緑ちゃん魔力回復ドリンクを……」
レベルが上がっているせいか、手加減して魔法を使うのにも意外と魔力を消費してしまう。
「緑、私もお願い」
スタリエちゃんと一緒にドリンクを飲んでいる中、また街の人が雪花ちゃんに告白して来た。
その男の人を親の仇かの様に睨むスタリエちゃん。
そんなスタリエちゃんの形相を見た男の人は慌てて逃げて行った。
「あ〜、もう限界」
そう叫ぶとスタリエちゃんは何かを作り始め、できた物を雪花ちゃんの首にかけた。
[私には彼氏が居ます]
そう書かれた厚紙を首からぶら下げる雪花ちゃん。
「ふう、コレで大丈夫」
「なっ、こんなの嫌です」
そう言って、雪花ちゃんは彼氏の文字を私の名前に書き直した。
「なっ、ふざけないでよ」
「ふざけていません」
「日菜は私の物よ」
「愛する人を物扱いだなんて、人間ってホントに野蛮」
そう言って二人が睨み合う。
あれっ?
雪花ちゃんって勇者が好きなんじゃ……。
私がそんな事を思っていると、再び男の人が声をかけてきた。
「あの……」
「「あっ?」」
雪花ちゃんとスタリエちゃんの迫力に男の人が逃げて行く。
良かった。
二人がこの調子なら、男の人も凍らずに済むかな。
私は背後で言い争いながら歩く二人を背に安心して城下町を楽しむ事にした。
それにしても私も一度は、ああやってモテてみたいものだ。
第43話 完




