第35話[目玉焼き]
「待って下さい、水の国やメルヘン王国に確認を取らなくて良いんですか?」
「いや、だって……、遠いじゃん」
「えっ……」
まさかの返答でララちゃんは黙ってしまう。
私もそんな返事が返ってくるとは思わなかった。
「それに、確認を取っている間に逃げ出すかもしれないし……」
いやまあ、確かにそう思うのも不思議では無いか……。
私達はペンダを逃した罪で捕まっているんだし。
「後、気づいたんだよね」
「こっそり処刑すれば、他国にバレずに済むって……」
いや、本当に王様なの?
考え方、ゲスっぽいけど……。
「いや、待って下さい」
「そうだ、ブランガガルならどうですか?」
「あそこならそんなに日がかかりません」
「たわけ、あんな怖い国、誰が近寄れるか」
「使者を送れば首が返ってくるかも知れん」
「そんなわけねーだろ」
「アーちゃんを馬鹿にすんな」
いや、馬鹿にするとか以前にこの王様、本当に大丈夫なのだろうか?
私がそんな事を考えていた時だった。
兵士が慌てて謁見の間に現れた。
「大変です」
「ブランガガル国女王アーネと名乗る者とブランガガル国の錬金術師サーベリックと名乗る者が城に攻め入って来ました」
「なに」
「アーちゃんとサーちゃんだ」
「二人が助けに来たんだ」
たった二人で攻め入る何てすごい。
もしかして、私達助かるのかな?
私は期待を胸に二人が来るのを待つ。
そして……。
「あなたがこの国の王様ですか?」
「お初にお目にかかります、私はブランガガル国女王のアーネと申します」
「アーちゃん、名乗っても無駄じゃよ」
「そうですね、この国は我がブランガガルの領地にしますからね」
「さて、手始めにそこで踏ん反りかえっている豚の目玉を今晩のディナーとして頂きましょうか」
「キシシシシシ、アーちゃんは最高の女王様じゃ」
「私も作った錬金術の品で生きた人間のミンチでも作ろうかな」
「下半身だけミンチになった姿を見て一体どんな表情を浮かべるのか、楽しみじゃわい」
「キシシシシシ」
えっ、どうしたの二人共……。
何か怖いんだけど……。
王様も顔を青くしてるし、皆んなも唖然としている。
それに何より、レイナちゃんが涙目になっているよ。
えっ、本当にどうしたの?
私達は二人の変貌ぶりに戸惑っていた。
第35話 完




