第33話[常に発動中]
私だけ処刑されるんじゃ……。
そんな事を思っていた時だった。
「馬鹿野郎、日菜さんを舐めんじゃねー」
そう言ってレイナちゃんが私を庇ってくれた。
「日菜さんはなぁ、道を歩けば犬の芸術品を踏んだり、金を持たせればスリに会う」
「そんな不幸の中、必死に生きてんだよ」
レイナちゃん……。
庇ってくれてありがとう。
でも、ちょっとだけ言い方を変えてくれた方がもっと嬉しかったかな。
「何を言っているんだお前は、そんな奴居る訳無いだろう」
団長さん、ここに居ます。
「なら試してみるか?」
「それは国王陛下が決める事だ」
「陛下、如何いたします?」
王様はしばらく考えて、そして決断する。
「ふむ、もしその話しが本当なら、可哀想だから今回の件は見逃そうではないか」
「やりましたね日菜さん」
そう言ってレイナちゃんは私に親指を立てた。
ありがとうレイナちゃん、恩にきるよ。
そして……。
「さあ、この道を歩くのじゃ」
私は城下町に連れられて、薄汚れた道を歩かされる。
ここは……、スラム街なのだろうか?
野良犬や野良猫もわんさか居る。
噛み付いてきたりしないよね?
「日菜ちゃん頑張れ」
勇者達の声援が聞こえて来る。
アレを踏むのに頑張れって何か複雑……。
それにしても、こんな道を選ぶ何て王様って意外と優しいのかな?
普通に歩いていれば踏みそうなものだけど……。
そして、私は指定された距離を歩き切った。
「陛下、どうやら何も踏まなかった様です」
「それと、一万ベルが入った財布を拾ったとか……」
「ほう、財布を……」
ううぅ……、皆んなの視線が怖い。
「日菜、何で踏まなかったのよ」
「探せばあったでしょ」
いや、無かったんだよ。
何故か、犬や猫の芸術品が一つも……。
「それどころか財布を拾って来る何て……」
スタリエちゃんに責められる中、勇者が私の肩に手を置いた。
「まだスリの件が残っているから、そっち頑張ろ」
スリに会う為に頑張るか……。
本当に複雑だ。
そして、私は自腹で大金を持たされ、スラム街を歩き回る。
自腹だから確実に不幸体質が発動するだろう。
そう思っていたのだが……。
「陛下、スリが落とした財布を大量に拾って来ました」
「ちょっと、何財布拾ってんのよ」
いや、私もビックリだよ。
前を歩いてた人が財布を一杯落とすんだもん。
手伝ってあげたら逃げ出してそれで……。
「ふむ、私をここまで来させて置いて嘘だったじゃ済まされんぞ」
王様が私を睨んで来る。
そんな中、ララちゃんがポンと手を叩いた。
「分かりました」
「今の日菜さんにとっての不幸は処刑される事、つまり今も不幸体質は発動しているんですよ」
あはは、って事は処刑されるまで私は何も不幸な事が起きないって事?
そんな馬鹿な……。
私は辺りを見回すが誰も視線を合わせてくれなかった。
第33話 完




