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第30話[別れ]

私達は宿屋にペンダを連れ帰り、ベッドへ寝かせ、スタリエちゃんの回復魔法でペンダを治療していく。

そんな中、ズズちゃんがやって来た。


「お姉ちゃん大丈夫?」


「ああ、平気だ」

「私よりお前はどうなんだ?」


「私は元気だよ」

「お姉ちゃんが守ってくれたから」

「ありがとうお姉ちゃん」


そう言ってズズちゃんはペンダを抱きしめた。

涙で視界が歪む。

そんな中、スタリエちゃんは涙と鼻水を垂らしながらペンダに回復魔法をかけていた。


「スタリエちゃん、はいティッシュ」


「ありがとう日菜」


私はスタリエちゃんの鼻水を拭き取るとゴミ箱にそれを捨てた。


「緑ちゃん、勇者がゴミ箱を漁らない様に見張っておいて」


「はい」


「やだなぁ日菜ちゃんは、私そんな変態じゃ無いよ」


とか言って、コソコソゴミ箱に近付いていたじゃない。

私と勇者のやり取りを見ていたペンダが笑う。


「相変わらずだな」


「えへへ、やっといつもの元気出たんじゃない?」

「ペンダには暗い顔は似合わないんだから、もう死ぬとか言っちゃ駄目だよ」


勇者……。

まさか、皆んなを笑わせる為に?

な訳ないよね、多分……。


傷口が塞がり、しばらくは安静にする様にスタリエちゃんがペンダに忠告するが、ペンダはベッドから起き上がり、身支度を済ませた。


「ちょっと、しばらく安静にって言ったじゃない、この馬鹿」


「悪いな、雪花達が心配なんだ」

「魔王城に帰らないと……」


仲間の為に帰ろうとするペンダを私達は止められなかった。


「これ、ポーション何だけど良かったら使って」


「ありがとな日菜」


私達は外に出てペンダを見送った。


「勇者、お前達に出会えて良かったぜ」

「次会う時は恐らく魔王城でだろうな」

「全力で戦うから覚悟しとけよ」


「覚悟するのはペンダの方だよ」

「勇者パワーで圧勝してみせるからね」


「ケッ、何だよソレ」


ペンダはしばらく沈黙し、口を開く。


「……、ありがとな皆んな」

「お前達との旅は楽しかったぜ」

「出来ればもっと旅を続けたかった……」


別れが辛いのかペンダはしばらく黙り込み、そして「じゃあな」と言って去って行った。


「はぁあ、コレで五月蝿いのは勇者だけになったわね」

「良かった良かった」


そう言って悪態をつくスタリエちゃんの目からは涙が滲んでいた。

私達は別れの悲しみを胸に抱きながら宿屋へ帰って行く。


第30話 完

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