第17話[実る恋]
バカンスで体を休めた私達は本命である材料集めの為に海岸沿いにある洞窟に来ていた。
「あった、何だ楽勝じゃん」
そう言って私は貝の貝柱を採取した。
「はい、日菜ちゃん」
「貝柱、この袋に入れて」
そう言って勇者はサーベリックちゃんから貰った巾着袋を広げた。
何でもこの巾着袋、錬金術で作った代物で生物を腐らなくする効果があるらしい。
「あっ、勇者」
「私、勇者の事好きだよ」
「もちろん性的な意味で」
「日菜ちゃん⁉︎」
アレ?
私何言ってんだろ。
思っても無い事を口に……。
早く訂正しないと。
「私、勇者の事を思うと体が疼いちゃうの」
「もちろん性的な意味でだよ」
「ひ……、日菜」
今にも泣きそうな表情でスタリエちゃんが私に近づいてきた。
ちなみに勇者は顔を赤くし嬉し泣きしていた。
「あっ、分かった」
「このクズに弱み握られてるんでしょ」
「正直に言って、私が守ってあげるから」
「私、スタリエちゃんの事大っ嫌いだよ」
「性的な意味で」
泣き崩れるスタリエちゃん、私こんな事を言いたくないのに何故だか勝手に言葉が出てしまう。
まるで口が意思を持ち言葉を発しているかの様に……。
「遂に私の想いが通じたんだね」
「日菜ちゃん、早速だけど脱ぎたてパンツをくれないかな?」
何言ってんの?
普通に考えて恋人が出来た初日にパンツねだる奴いる?
いや、勇者の恋人になったつもりは無いけど……。
とりあえず、断らなくては……。
「もっちろん、パンツあげちゃう」
「性的な意味でだぜ」
「本当に⁉︎」
「ちょっと、人気の無い場所で二人きりになろうか」
息を荒げながら近づく勇者に私は杖を振り落とした。
あくまで口が勝手に言ってるだけで私の意思じゃない。
「ハァハァ、成る程よくあるアレか、フフフ、全く日菜ちゃんの体は正直じゃないんだから」
いや、逆だからね。
普通は体は正直なのに口は正直じゃないだから。
つか正直じゃない体って何?
「早く私の側に来て……」
「性的な意味で……」
まただ、また変な事を……。
そんな中、地元の漁師さんが洞窟内に現れた。
「あんれぇ、おめえさん方なにしてるだ」
辺りを見回し理解したのか、私の触れた貝について地元の漁師さんが教えてくれた。
別名、大ボラ貝。
触れた者はしばらくホラを吹くとか……。
第17話 完




